第190回
免疫抑制剤の落とし穴?
どうしても人間は新しいほうへ
関心が行きがちなものですが、
新しい薬の場合には
効き目だけでなく副作用のほうにも
特に気を配らなければならない必要があります。
何故なら、副作用でもすぐに現れる場合と
長期間してから出現してくる場合とがあるからです。
プロトピックという
免疫抑制剤を応用した軟膏のことを
前回にもこのコラムで書きましたが、
この軟膏の成分であるタクロリムスは、
臓器移植の拒絶反応を抑える
すぐれた働きを持つ薬として海外でも有名です。
通常、臓器移植は
生命に関わる重大な病気で
やむを得ず行なわれることが多く、
生命に危険な拒絶反応を抑えるために
強い免疫抑制の効果がある
この薬が投与されますが、
長期連用の副作用として
ガンの発生率が高くなるなどの問題点が
やはりどうしても存在してきます。
もちろん、
内服薬や注射剤と比べて
外用薬の場合には
副作用の心配も少なくて済むはずですが、
日本でも昨年の10月に、
プロトピックを3年余り塗り続けていた16歳の女性に
悪性リンパ腫が発見されたという記事が
新聞にも取り上げられておりました。
また、子供は大人に比べて新陳代謝が盛んで
発ガンの危険性も増すため、
より慎重な検討が必要であるという意見もあります。
アトピー性皮膚炎の患者さんにとって
この薬は非常に効果があるということですが、
使う側にも正確な専門知識と
的確な判断が要求される薬でもあります。
そのため、プロトピック軟膏の使用には、
「医師によるインフォームド・コンセントの徹底」
(発癌性に関する情報を患者に提供する)・
「投薬記録を患者に手渡す」
(小児用プロトピック軟膏のみ)などの注意事項が
特に義務づけられております。
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