虎ノ門漢方堂店主・城戸克治さんの
やさしい漢方の話

第62回
スッポンで子宮筋腫が消えた?

前回、塩からい味のものは
硬いものを軟らかくする作用があるといいましたが、
じつはもっとよいものが中医学にはあります。

「軟堅薬(なんけんやく)」と呼ばれる
芍薬(しゃくやく)・牡丹皮(ぼたんぴ)・
莪朮(がじゅつ)・鼈甲(べっこう、スッポンの甲羅)
などの生薬がそうで、
それらを漢方薬に加えて使うと
前立腺肥大や子宮筋腫などでは
塊りが軟らかくなって消えたようになり
自覚症状がたいへんに楽になることがよくあります。
そして、その場合には
病院で超音波の検査をしても、
大きさがだいぶ小さくなっていることが分かります。
また、放射線の腹部照射で腸管が癒着してしまい
塊りみたいになった場合にも
有効なことがあるともいわれています。

また、中医学では
亀板(きばん)と呼ばれる亀の甲羅も
骨を丈夫にする・血液を増やす・体を潤す・
腎を養う・止血などの作用があるとされていますが、
スッポンの甲羅のように
硬いものを軟らかくする働きはありません。

日本では婦人の病いに
当帰芍薬散という漢方薬をよく使いますが、
中医学では
この中の当帰(とうき)という薬草は
補血・活血・止血の作用のほかにも
子宮収縮を促進したり抑制したりする
双方向の調整作用も持っており
さらに子宮の発育をよくするとも考えられているため
産婦人科の漢方薬には欠かせません。

現在、中国では
当帰が主成分の当帰膏(とうきこう)という
甘くて飲みやすいシロップ状の漢方薬が有名で
アメリカやヨーロッパにまで輸出されています。
そして、この漢方薬は子宮筋腫と
それによる貧血と出血を同時に治療できるため、
婦人の宝とも呼ばれています。


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