服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第972回
ほほ笑みから大笑へ

きのう一日のうちで、
何回クスリと笑う場面がありましたか。
私も胸に手を置いて考えてみたのですが、
思い出せません。
これはいけないことだと大いに反省したことです。
小さく、そっと笑うことを
「クスリ」と形容しますが、
まさにこれは「薬」だと思います。
ふつう酒だと言われるのですが、
「笑い」もまた百薬の長なのでしょう。

クスリと笑うことが百薬の長であるのなら、
アッハッハッと大きく、腹をかかえて笑うことは
人間ができる最高の善行ということになります。
一日一回、ぜひ大笑致しましょう。
またまた言葉遊びですが、
大笑は「大勝」に通じるのではないでしょうか。
大いに笑うことは大いに勝つことである、と。

では、どうして笑う人と笑わない人とがいるのか。
同じ場面に出くわして、
笑える人と笑えない人とがいます。
なぜでしょう。
これは心の準備と関係があるのではないでしょうか。
笑うための準備をしている人と、
そうでない人がいます。
いや、むしろ時として、
ナニかあったら怒ってやろうと、
待ち構えているような人さえいます。
これではなにか面白いことがあっても笑えませんよね。

「人はおかしいから笑うのではない。
 笑うからおかしくなるのだ」
という有名な説はまったくその通りだと思います。
怒ってやろうと待ち構えている人が
すぐに笑えるはずもありません。
逆に、さあ、笑いましょうと用意している人は、
どんな小さなことでもすぐに笑えることでしょう。

最初は小さなほほ笑みで良いのです。
ほほ笑むということは、
すでに心が柔らかくなっているわけです。
すぐにハハハと笑えます。
さらに笑いが笑いを呼んで、
ワッハッハッとなればしめたものです。―
これでたぶん
「一日一回大笑」を目標にできるでしょう。

人生は良いことと悪いことが
半分づつだと思います。
その悪いことを
少しでも良いことに変えるための魔法の杖が
「笑い」なのではないでしょうか。
さあ、明るく、元気に、笑いましょう。


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