第842回
言葉のおしゃれ、しゃれ言葉
しゃれ言葉を知っていますか。
まず先に例を挙げたほうがはやいでしょう。
・夏の座敷で――(あけっぱなし)
「そのままの気持で、なにも飾ったりしない」
ざっとそんな時に使います。
一種のかけ言葉でもあります。
直接話法に対する間接話法。
言いたいことをオブラートに包み、
ユーモアを交えることで、
その表現をやわらかく相手に伝える効果があります。
ただしたいていのしゃれ言葉は
江戸時代に生まれたものでしょうから、
今の時代とは落差がある。
下品すぎて実際には口に出来ないものも少なくありません。
またよほど説明を加えないと、
意味の通らないものもあります。
でも、逆にいえば
風俗史の勉強(?)になるのかも知れません。
ご用とお急ぎでない方、
少ししゃれ言葉と一緒に遊んでみて下さい。
・紺屋(こうや)のあさってで――(あてにならない)
紺屋(こうや)は染物屋です。
染物は天候に左右されるので、なかなか約束が守れない。
・酒屋の歳暮で――(かすばっかり)
むかしの酒屋は歳暮に酒かすを贈る風習があった。
・そば屋の湯桶(ゆとう)で――(横から口を出す)
湯桶の形を見ればこれは分りますね。
・鮨屋のおまんまで――(あおがれっぱなし)
飯を冷ます時にうちわで煽ぐから。
もちろん、おだてられるという意味。
・石屋の宿替で――(思い思い)
石屋が引越する時は、重い重い。
・植木屋の大風で――(気がもめる)
もちろん木がもめるに掛けてある。
・うどん屋の釜で――(言うばっかり)
湯ばかり。
・居酒屋の燗徳利で――(出たり入ったり)
・おでん屋のはんぺんで――(ふくれる)
・梨の下の下の昼寝で――(この上なし)
・仁井田(にいだ)の相撲で――(待ったなし)
高知、仁井田神社の奉納相撲には、
「待った」がなかったから。
もし、ご興味ある人は
『ことば遊び辞典』(鈴木
棠三 編 東京堂出版刊)を
参考にして下さい。
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