服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第812回
レザー・ソールに愛をこめて

今回は、日ごろご愛読下さっている読者の
Satoshi Yoshimura 様から
「レザー・ソール」について
質問メールをいただきましたので、
そのご回答を掲載させていただきます。


■Satoshi Yoshimura 様にいただいたメール

出石尚三様

はじめまして。
友人に出石さんのコラムのことを教わり、
それ以来毎日楽しく拝見させて頂いています。

少し幼稚な質問なのですが、
例えばカーペット敷きであったりとか、
あるいはピカピカに磨かれた石のような材質で
廊下が敷かれたオフィスなどに
お邪魔することがあります。

私の歩き方が悪いのかもしれませんが、
こういったオフィスの中や、
コンクリート敷の歩道などを革靴で歩いていると、
危うく足を滑らせ転びそうになることがあり、
実は先日不注意にも転んでしまい、
お気に入りのスーツのパンツに大きな穴があき、
悲しい思いをしてしまいました。

男子たるものつま先まで細心の注意を払って歩けば
転ぶことなどないということなのかもしれませんが、
先日ロンドンに出かけた際に奮発して
底がきれいに革張りされた革靴を購入してきたこともあり、
歩き方以外にも何か工夫のしようなりあるのかと思い、
質問させて頂きました。


■出石さんからのA(答え)

ご丁寧にもお便りを下さり、
ありがとうございます。
また、時折お目通し下さっていることにも、
重ねて感謝申上げます。

むかしの子供たちは、
「滑って転んで、大分県」などと
たあいもない言葉遊びをしたものです。
言葉遊びだけでなく、
私も実際に転んだことがあります。

滑る最大の原因は、
レザー・ソールにあります。
真新しいレザー・ソールは絶対に滑ります。
こんなところで「絶対に」などと
強調してはいけないのでしょうが、
それはレザー・ソール自体を観察すれば
すぐに分ることです。
新しい革底はたいていピカピカと光っているはずです。

この滑らかな表面のレザー・ソールと、
同じように磨かれた大理石とがふれ合って、
ある角度で、一定の力がかかると、
滑らないはずがありません。
つまり新しいレザー・ソールは滑る。
これはもう何が悪いのでもなく、
レザー・ソールであることの宿命のようなものです。

では、どうすれば良いか。
これは最初に、
一度でもザラザラした石の上でも歩けば、
その後はまず滑ることがありません。
なにごとも最初が肝心ということです。
もしもそれでも滑るようなら、
なにか他に特別の理由があるとしか考えられません。

けれども真新しいレザー・ソールで、
必ず、最初に、ザラついた石の上を歩くとは限りません。
そんな時にはどうすれば良いのか。
心を鬼にして、
レザー・ソールにサンド・ペーパーをかけておく。
革底の中心部、
もっとも力がかかる部分だけで結構です。
こうしておけば絶対に(?)滑ることがありません。

もう少し細かい点を挙げるなら、
実は足と靴のとのフィット性も関係しているのです。
良い靴というものは、
最初は素っ気ない顔をしている。
でも、これが履けば履くほど、親し気になり、
心地良く足になじんでくるのです。
つまりこちらが手入れなどを含めて、
愛情をかけてやれば、愛情を返してくる。
これが上等の靴の特性でもあるのです。


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