第782回
対話は美しさのはじまりです
自分で自分を話し上手だと思いますか。
私は話し上手をうらやましいなあ、
と思うほうです。
世に話し上手は多い。
もっとも自称を含めてのことですが。
話し上手に較べて少ないのが、聞き上手。
いや、聞き上手こそが
本当の話し上手かも知れないのですが。
京都の金閣寺は
どのようにして造られたのでしょうか。
私はまったく知りません。
でも、ひとりで造ったのではないとすれば、
意図を伝えるための会話や対話があったはずです。
話すことも聞くことも、
結局は意思を伝えあうための、大切な方法です。
少しおおげさに言えば、
対話がなければ文化も生まれないのです。
人は話す動物です。
表現を変えるなら、
話すことでどんどん人になってゆく、
人があらわれる。
たとえば深刻な悩みがあったとしましょう。
それがどのような悩みであるかを、
真剣に1時間話したとしましょう。
と、その悩みの深刻さは半減しているはずです。
話すことは、
頭の中を整理することでもあるからです。
でも、ひとりで話すのは難しい。
それほどの効果はあがらない。
少なくとも伝えあうことは出来ない。
つまり人は対話なしに
上手に、美しく生きることはできないのです。
そこで大切なのは、聞き上手。
美しい大人になるということは、
人の話しを聞き、内容のある会話、対話に導くことです。
真面目な、中身のある対話からは、
必ず何かが生まれるものです。
話しを聞くということは、
その人に興味関心を持ち、
訊(き)く行為からはじまります。
「お元気ですか?」
「最近は何をやってらっしゃいますか?」
「楽しいことがありましたか?」・・・。
もし私が、人からそんなふうに
関心を持ってくれていると分ったなら、
人間としてこれほど嬉しいことはありません。
何でも話してみたい、と思うでしょう。
見事な対話は人を美しく磨き、
人生をゆたかにするものなのです。
話す前に訊け、であります。
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