服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第764回
ステッキのエチケットについて

ステッキを使ったことがありますか。
私はまだ使ったことがないのです。
でも、ぜひ近いうちに
一種のアクセサリーとして、
ステッキを使ってみたいと考えています。
日本語で「杖(つえ)」、
英語で“ケーン”cane。
もちろん“スティック”stickにも
「杖」の意味があります。
ただし“ケーン”が主として
紳士の小道具を指すのに対して、
“スティック”はどちらかといえば、
儀式などの際の装飾品を意味することが多いようです。

ところでどうして
“ケーン”が紳士の小道具であるのか。
これは騎士の時代の剣が源でしょう。
常に剣を携えることは、
騎士の身分であることの象徴だったのです。
武士の刀みたいなものですね。
それが時代が代って、
剣を“ケーン”に代えたのです。
さらに時代が下がると、
ケーンが細巻きの傘になったりもしたわけです。

1943年のハリウッドにおいて。
レイモンド・チャンドラーと、
ビリー・ワイルダーのふたりが
共同で脚本を書いたことがあります。
この時、ビリー・ワイルダーが部屋のなかで
ケーンをふりまわすので、
チャンドラーが腹を立てた、という話があります。
これは要するに、
ワイルダーの過度な紳士気取りを
嫌ってのことであったのでしょう。
なにごとも過ぎたるは及ばざるがごとし、であります。
部屋のなかでケーンをふりまわしてはいけませんね。

さて、ココボロの本体に
象牙の手元(てもと)の付いたステッキ(ケーン)が
14,700円というのですが、迷いますね。
ついでながら石突(いしづき)には
オランダ水牛の角(つの)が使われているとのこと。
ココボロとは日本で言う「紫檀」に相当する、
中南米産の樹木のことです。
もしご興味おありなら、
柘(つげ)製作所(TEL:3845-1221)の
ホーム・ページをごらん下さい。

たぶん私もいつか実用品としてのステッキが
必要になるのでしょうが、
それまでに絶対に装飾品としての
それを使ってみたいものです。


←前回記事へ 2005年2月4日(金) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ