第761回
略礼装を創る話

「ディレクターズ・スーツ」を着たことがありますか。
黒い上着に縞ズボンの略礼装のことですね。
「ディレクターズ・スーツ」は
良く出来た和製英語で、英米では使われていません。
ただし「ディレクターズ・スーツ」式の
服装があることは間違いありません。
強いて言えば、
“デイ・インフォーマル・ウェア”でしょうか。

20世紀はじめ、
ある英国の王族が絵の展覧会の初日に行くのに、
モーニング・コートでは大げさすぎるとして、
この組合わせを考えた、と言われています。
つまり「ディレクターズ・スーツ」の原型は
モーニング・コートなのです。
当然、日中の略礼服。
もう少し正確にいえば、
午後６時以前に着る服装ということになります。

もう一度おさらいをしておきましょう。
黒い上着。
原則としてはシングル前、１つボタン、剣襟型ですが、
必ずしもそれに限定することはありません。
ライト・グレイのチョッキ。
これはシングル前でもダブル前でも結構。
ただし上着のＶゾーンから、
ごくわずかでもチョッキが見えるのが望ましい。
そして縞ズボン。
この裾口は必ず折返しなしにします。
また縞柄が明るいものほど、
フォーマル度が高いとされます。

つまり縞ズボンさえあれば、
手持ちの黒い上着と、グレイのチョッキとで、
比較的簡単に日中の略礼服が完成します。
昼間の装いであれば、
たいていの場面に通用しますから、便利でしょう。

白いドレス・シャツに
結下げネクタイを結ぶ。
これはシルバー・グレイの無地が基準ですが、
チェックやストライプ、
水玉などの織柄が入っているものでも構いません。
肝心なのは、シルバー・グレイであることです。
時と場合によっては、
アスコット・タイを結ぶこともできます。
もちろん礼装用のものです。
つまりは、モーニング・コートの代用である
という気持で着ることが大切なのだと思います。
自分のワードローブのなかから、
上手に組合わせて、
オリジナルの略礼装を創ろうではありませんか。