服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第760回
黄金のことば「お先にどうぞ」

エレベーター前で、
偶然人と出交することがありませんか。
エレベーターが降りて来る、ドアが開く。
むろん見知らぬ人ではありますが、2人で待っている。
と、ごく自然に「お先にどうぞ」ということになります。
これもまた日常のエチケットのひとつでしょう。

見知らぬ人でさえそうなのですから、
友人、知人の場合には、
もっとよく使う言葉かも知れません。
ふたりで誘い合って、
喫茶店に行く、レストランに行く。
入口の前で、「お先にどうぞ」。
男友達であろうと、女友達であろうと、
「お先にどうぞ」。
自動ドアであろうとなかろうと、
「お先にどうぞ」。
もちろん手動式の場合には、
ドアを開けてあげるべきでしょう。

入口ばかりでなく、
出口の時にも同じことでしょう。
ふつうは後輩にあたる人が、
先輩の人に対して、「お先にどうぞ」。
と言うことになっています。
けれどもあまり難しく考えずに、
自分が出来ることを、人にしてあげられるのは、
気持の良いことだと、私は考えています。

「お先にどうぞ」の心は、
なにも日本だけではないんですね。
諸外国でも似たような場面で、
似たような言葉を使います。
たとえば英語なら、“アフター・ユウ”。
直訳すれば「あなたの後に」かも知れませんが、
実際には「お先にどうぞ」の意味で使われます。

店の入口を出たり入ったりするのは
ごく日常的なことで、
その度に“アフター・ユウ”の言葉が聞えてくるのは、
美しいものです。
第一、出入口でもたもたせず、
スムースに流れてゆくだけでも
とても良いことだと思います。

ふだんの生活のなかで、
「お先にどうぞ」と言えるのなら、
もう少し拡大解釈しても良いのではないでしょうか。
車に乗っていても、「お先にどうぞ」。
人生においても、「お先にどうぞ」。
まず最初に、相手を優先する人だ、と考えていれば、
たいていのことにイライラしません。
そして結局はそのほうがうまくゆくものなのです。


←前回記事へ 2005年1月31日(月) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ