服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第573回
サマー・ヴェストの秘密

チョッキを着るのは好きなほうですか。
暑い時にチョッキはゴメン、
というむきもあるでしょう。
本当は上着さえ不要で、
シャツ1枚でデスクに向いたい人も
少なくないでしょう。

でも、ここではあえて
チョッキのすすめなのです。
ただしチョッキはチョッキでも、
サマー・ヴェストの提案なのです。
たいていはコットン・ニットのチョッキが多いようです。
プル・オーバー・タイプもあれば、
前ボタン式もあります。
もちろん素材についてもコットンばかりとは限らず、
麻やレーヨン、
あるいはリネンとコットンのミックスなど、
さまざまな種類があります。
色や柄も豊富。
もっともサマーヴェストですから、
白をはじめとして、
淡い色調のものが中心になっています。

そしてこのサマー・ヴェスト、
一般的にはカジュアル用と考えられているようです。
が、私はむしろビジネス用としても
使えるのではないか、と思うのです。
つまりサマー・スーツの下にサマー・ヴェスト。
オフィスではむろん上着を脱いで、デスクに向う。
冷房の効きすぎにも役立ってくれるかも知れません。
第一、初夏といえどもワイシャツ1枚であるよりも、
はるかにスマートな姿となるはずです。
白いシャツに白いサマー・ヴェスト、
淡いブルーのシャツに、
同色のサマー・ヴェスト・・・。
つまりシャツの色調を揃えたサマー・ヴェストなら、
ほとんど抵抗なく着られるでしょう。

またランチ・タイムにも役立ってくれる。
私のように食事の際に
お気に入りのネクタイを汚してしまう男に最適です。
それというのも、ネクタイではなく、
サマー・ヴェストのほうが汚れてくれるから。
もしヴェストがコットン・ニットなどであれば、
簡単に家庭洗濯ができるからです。
洗濯の後で、軽くアイロンをかけるだけで
すぐに着ることができます。
こんな便利なサマー・ヴェストを
カジュアル専用と考えるのは
ヤボというものでしょう。


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