服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第523回
世界でたったひとつの鞄

突然ですが、鞄を作ったことがありますか。
ついに私、鞄を作ってしまいました。
実は以前から大きな革が1枚あって、
何か作りたいなあ、と思っていたのです。

まず作りたいと思う鞄を
具体的にイメージします。
私は一重(ひとえ)仕立ての、
ほぼ直径の、ショルダー・バッグです。
いちばん簡単だろうと思ったからです。
次に設計図(?)を描いて、
これに従って実寸大の型紙を作ります。

次に「ユザワヤ」(TEL:3734-4141)へ行って、
必要な道具を揃えます。
最低限必要な道具は、
革に穴を開けるためのパンチ、
革を縫うための釘と糸、
そして小さな金具類です。

さて今度は革を裏に拡げて、型紙を移し取る。
移し取ったなら、次に裁断。
カッターナイフで切るわけです。
一度に切ろうとしないで、丁寧に、
ゆっくりと何回もなぞるようにして切る。
切った後は縫製。
これがたいへんな作業なのです。
直接には縫えませんから、
まず専用パンチを使って、縫穴を開けてゆく。
縫穴ができたなら、後は比較的簡単です。
太い針と、ロウ引きした麻糸で縫う。
縫った後はかなり丈夫です。

ショルダー・ベルトになる部分は別に作ります。
これは縫うというより、
むしろ金具でカシめる作業が多い。
革に穴を開け、
その両側から金具を通して、木づきで叩く。
これが簡単なようで、難しい。
まっすぐに打たないと、曲ってしまう。
金具は少し余分に買っておいたほうが良いでしょう。

遊びながら、失敗しながら、
なんとか仕上りました。
満足度は60点というところでしょうか。
作った後での反省点もたくさんあります。
労働時間と思えば、買ったほうが安いかなあ、
と思わないでもありません。
でも世界でたったひとつの鞄であることは
間違いないでしょう。

そしてまた手を動かすことが、
知らず知らずのうちに、
心の安らぎにつながっていることに気づきました。
そのうちにまた、
もうひとつ作ろうかなあと考えはじめています。


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