服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第495回
ストライプを着こなす心について

ストライプはお好きですか。
縞柄のことですね。
チョーク・ストライプ、ペンシル・ストライプ、
オルタネート・ストライプ・・・。
縞柄の種類は星の数ほどあるのでは、
と思えてくるほどです。

一本の線にある構成美。
簡素で、美しい柄、
だからこそ人気があるのでしょう。
名著『粋の構造』の著者、九鬼周造は、
「縞は粋」と言っています。
たがいの線はけっして交わることがなく、
ために諦(あきら)めの心があり、
だから粋なのだ。
ざっとそのような説明を加えています。

縞は江戸時代においても、
人気があったのです。
縞の語源は「島」だ、という説があります。
この場合の「島」は外国の島の意味で、
要するに舶来品であることを指していたのです。
つまり縞の人気の何割かは、
舶来品崇拝であったのでしょう。

そして今もなお、男の服装にとって
もっとも身近な柄となっています。
ストライプのスーツ、ストライプのシャツ、
ストライプのネクタイ・・・。
でも、ストライプの服さえ着ていればおしゃれ、
と安心していませんか。
「安心」と「おしゃれ」とは、
たいへん遠い距離にあります。
極端な言い方をすれば、
簡単には安心しないことが、
おしゃれの心なのです。

スーツも、シャツも、タイもすべてストライプ、
という着こなしがあります。
これも好みの問題でしょう。
単純に柄の重なりは
野暮と決めつけようとは思いません。
でも、ストライプ・オン・ストライプだからおしゃれ、
と安心してしまう心は美しくないのです。

ひとつ楽しんで、ひとつ我慢する。
これが本当のおしゃれの基本原則です。
ストライプのスーツをより楽しもうとするなら、
どこかひとつくらいは、我慢する。
つまり無地のシャツか、
無地のタイを合わせてみる。
つまり上手におしゃれをするということは、
技術の問題ではなく、
心の持ち方だといいたいのです。
常に、少しだけ我慢する。
これもヒントのひとつなのです。


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