服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第442回
蝶ネクタイでドレス・アップを

どうしてフォーマル・ウェアには蝶ネクタイなのか、
考えたことがありますか。
ふつうタキシードには
黒絹の蝶ネクタイを結びますよね。
これを“ブラック・タイ”と呼んで、
ドレス・アップの代名詞にもなっています。
一方、“ホワイト・タイ”と言えば、
白麻の蝶ネクタイで、
燕尾服に合わせるものです。

今のようなフォア・イン・ハンド
(結び下げネクタイ)が一般化しはじめるのは、
1890年代以降で、
ボウ・タイ(蝶ネクタイ)のほうがはるかに古いからです。
フォーマル・ウェアはいつも、
ひと時代むかしの服を着るという特徴があるのです。

ところでボウ・タイは
大きく分けて2種類があります。
“レディ・メイド・ボウ”と
“タイ・イット・ニアセルフ”との。
つまり、あらかじめ結目ができている蝶ネクタイと、
最初から自分で結ぶ蝶ネクタイと。
これはできれば手結びの蝶ネクタイをおすすめします。
そのほうが味わいのある、
個性的な結目になるからです。
蝶ネクタイはその名の通り、蝶結びで、
一度覚えると誰でも簡単に結べますよ。
結局のところボウ・タイは、
あまりにきちんと整っているよりも、
むしろ少し崩れているほうがおしゃれなのだ、
ということになっています。

同じ蝶ネクタイでも、
左右に大きく拡がったスタイルをとくに
“バタフライ”の名で呼ばれます。
これは1904年、ミラノのスカラ座で
プッチーニの『マダム・バタフライ』が
上演されたのがきっかけです。
ウソのような話ですが、本当のことです。

一方、“バタフライ”とは逆に、
細い、直線な蝶ネクタイのことを
“クラブ・ボウ”と言います。
また両右の端が光っているデザインのことを、
“ポインテッド・エンド・ボウ”。
ひと口に蝶ネクタイといっても
さまざまな種類から選ぶことができるわけです。

またドレス・アップでも
黒無地と決ったものではありません。
カマー・バンドと揃えることで、
水玉模様やペイズリー柄なども楽しみたいものです。


←前回記事へ 2003年12月18日(木) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ