服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第375回
ドロボー泣かせのアタッシェ・ケース

アタッシュ・ケースを使ったことがありますか。―
たぶんここで賢明なる読者は
苦笑いすることでしょう。
「それを言うなら、アタッシェ・ケースだろう」と。
attache(「大使館員」の意味)ですから、
これは“アタッシェ”と呼ぶのが正しいのです。

さて、アタッシェ・ケース。
角張っていて固いので不都合なこともあります。
電車のなかで相手にぶつかったりすると、痛い。
まさかケガはしないでしょうが、
か弱い女性の膝などは可愛そうです。
さらには重い、古くさい、セールスマンみたい・・・。
マイナス要因もたくさんあります。

それでもなお、世の中には
熱烈なアタッシェ・ケースの愛好家がいます。
まず第1に中身の小道具をしっかり守ってくれる。
重要書類をシワひとつ寄せないで
持ち運ぶことも可能です。
第2にいつでもどこでも手紙が書ける。
アタッシェ・ケースのなかに
便箋と切手さえ入れておけば、
鞄を机代りにして便りをしたためる。
もう手紙なんて古いよ、
と言われたならそれまでのことですが。
第3にいつでもどこでも、
椅子代りにして腰かけることができる。
どうです、アタッシェ・ケースも
まだまだ捨てたものじゃありません。

ところで鍵付きのアタッシェ・ケースがあるのを
知っていますか。
いや、これも本当は「錠付き」と言うべきですね。
錠を開閉するのが「鍵」なのですから。
ああ、日本語は難しい。
錠付きアタッシェ・ケースは
当り前とおっしゃるのですか。
たしかにそうです。

でも堀商品の独自の鞄はちょっと一見の価値あり。
むかし日本を代表する錠前屋の堀社長が
海外旅行をした。
この時簡単に鞄が開けられてしまった。
そこで「よし、まず開かない鞄を作ろう」と決心した。
その結果が堀商店のアタッシェ・ケースなのです。
大きさによって8万円と9万円との2種があります。
(TEL:3591-6301)。
もちろん惚れ惚れするような錠がついていて、
特製チェーンまで内臓されています。
大男が座っても大丈夫なほど頑丈に作られていますよ。


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2003年10月12日(日)

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