服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第356回
流行と上手につきあう法

流行には敏感なほうだと思いますか。
それとも無関心なほうだと思いますか。
私自身はどちらかと言えば関心があるほうでしょう。
でも、だからといって
実際にすぐそれを身につけるかどうかは、
また別問題ですが。

<モードからむやみに顔をそむけることは、
 それをむやみに追いかけ回すのと同じにおろかしいことだ>
17世紀、フランスの思想家
ラ・ブリュイエールはこう言っています。
流行に対する姿勢もなかなか難しいようですね。

もうひとつ流行のやっかいなところは、
人間が存在するかぎり絶対になくならないことでしょう。
人の心に虚栄があるかぎり、
飽きるということがあるかぎり、
絶対になくならない。
ごく単純に決めつけると、
ハヤリを動かしているのはアキルである、
とも言えるでしょう。
アキルからハヤル。

たとえばピンクのシャツが流行ったとしましょう。
それを着る。新しい。
でも毎日のように着ていると
新鮮には思えなくなってくる。飽きる。
1年で、3年で、5年で。
今度はブルーが新しいぞ、ということになる。
これもまた流行の一面でしょう。

では流行と対抗するものは何かないのでしょうか。
あります、趣味性です。
いくら新しい流行が生まれても、
自分の好みに合わなければ、
それを身につけようという気にはなりません。
ちょっと理想的な言い方をすれば、
自分の好みを通して流行を採用するのが美しい、
ということになります。

「ハヤリ」対「コノミ」。
ハヤリだけで服を着るのは軽薄。
コノミだけで服を着るのは頑固。
ハヤリの要素が50%、コノミの要素が50%で
釣り合いがとれていれば、
本当におしゃれな人と呼ばれるのではないでしょうか。
流行に敏感な人は、いつも心のなかで、
ハヤリとコノミのシーソー・ゲームをしているのかも知れません。
そして敏感であればあるほど、
コノミもしっかり持つべきでしょう。
これならバランスのとれたモードになりますよね。
ブリュイエールさん!


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2003年9月23日(火)

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