第321回
新しいこと、古いこと
ところてんの話を覚えていますか。
どうして「心太」と書いて「ところてん」と読むのか、
という話をしたような記憶があります。
その時、どこかでところてんつきを
売っていないものだろうか、ということも書きました。
すると親切なことに藤田千恵子さんが
ところてんつきについての情報を教えてくれたのです。
有難いことです。感謝しています。
藤田千恵子さんは日本酒にとても造詣の深い方。
私にとっては日本酒の先生です。
日本酒の先生からところてんつきを教えてもらうとは、
意外でした。
それは「ガイア」(TEL:3219-4865)という店で、ひとつ900円。
もちろんところてんも売っています。
これを中に入れて、ゆっくり突いてゆくと
ごく自然に食べやすい状態にしてくれる道具なのです。
もしご興味おありの方はぜひ一度お試し下さい。
ところてんと似て非なるものに、
くずきりがあります。
これもまた夏に似合う食べ物のひとつでしょう。
ところてんは酢の風味で食べることが多いのに対して、
くずきりは蜜(みつ)の味で食べる。
それも黒蜜。
くずきりの原料が葛(くず)の根であることは
言うまでもないでしょう。
葛(くず)はマメ科の植物で、
立派なつるをつけるのが特徴。
むかしはこのつるを使って
行李(こうり)などを作ったのだそうです。
またつるを繊維にして生地を織った。
これが葛布(くずふ)です。
一方、根の部分はくずきりの原料であるだけでなく、
葛根湯の原料でもあります。
根を乾かしてから粉にし、
麻黄(まおう)、しょうがなどを加えたものが、葛根湯。
ということはくずきりだってただ食べて美味しい、
快い冷感を楽しむだけでなく、
夏カゼの予防薬という意味もあったのかも知れません。
ところてんもくずきりも、
たいていの人にとっては
むかしむかしのおとぎ話であるでしょう。
でも、新しいものがすべて良く、
古いものはすべて良くない、と決めつけたものでもありません。
私たちがとくに懐かしいと思うには
必ずなにか理由があるはずです。
つまり、もう一度、見直しなさい、という信号でもあるのです。
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