服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第299回
ところてん健康法

ところてんはお好きですか。
私は酒好きの甘党で、
当然ところてんも好きです。
でも、ところてんも甘いものと区別して良いかどうか。
たいていは酢じょうゆで食べる。
これにうんと辛子を加えると、
むしろ辛いものになってしまいます。
けれども今はあんみつ屋などに置いていますから、
やはり甘いもので良いのかも知れません。

ところでところてんを漢字で書くと、心太。
どうして心が太いと書いて、
「ところてん」と読むのか。
いくらなんでも無理があるのでしょうか。
それに手近かにある辞書を開いてみても、
なぜ「心太(ところてん)」なのか教えてくれないのです。

ところてんの原料は、てんぐさですね。
むろん海草の一種で、別名ところてんぐさ。
ちょうど土用の頃、てんぐさを採って、干す。
干上がったあと、きれいに掃除をして、さらに乾かす。
乾いたならゆっくりと煮て溶かし、
これを型に入れて固めたものが、ところてんとなるわけです。
つまり原料は100%海草ですから、
身体にはとても良いのです。
少なくとも、古くさい、女子供の食べ物などと
押しやる必要はないのです。

さて、てんぐさ(石花菜『てんぐさ』と書くそうです)の異名が、
心太(こころぶと)なのです。
「こころぶと」が「こころてい」と変化し、
それがさらになまって「ところてん」になったというのです。
そもそもは「心太(こころぶと)」は
原料を指したのですが、
その呼び方が少しづつ変化して、
漢字だけがそのまま残ったというわけなのです。

変ったのはなにも呼び方だけでなく、
その食べ方にも変化はあったようです。
たとえば江戸の頃には
砂糖をかけて食べるのがふつうであったとか。
私なんかもハチミツをかけて食べたいなあ、
という気持にもなります。

そうすると家で作ったなら、好きな味つけで食べられる。
細長いところてんを買ってきて、
あとはてんつきで突くだけ。
どこかてんつきを売っているところを知りませんか。


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2003年7月19日(土)

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