服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第306回
魔法のパナマ帽

帽子はお好きですか。
もちろん帽子は大好きです。
でも、夏帽子の場合は単なる好き嫌い以上に、
必需品といった感があります。
炎天下、帽子なしで歩くのはとてもたえられないからです。
外出の際は必ずなにかの夏帽子を被ります。

男の夏帽子でもっともよく知られているのは、
パナマ帽でしょう。
パナマ帽の原産地は
エクアドル、コロンビア、ベルーなどです。
たとえばメイド・イン・エクアドルとあったなら、
それは本物のパナマ帽だと考えて良いでしょう。
これらの帽子の積出港がパナマ港であったために
「パナマ」と名づけられたのです。

むかしは日本でもパナマ帽を作っていた、
といえば驚かれるでしょうか。
でも、これは本当。
主としてアメリカなどへ輸出されていたのです。
1920年代の頃。
当時の日本の賃金は安く、なおかつ手先が器用で、
仕上りが美しかったからです。
アメリカではこれを
“パナマ・ジャパニーズ”と呼んだものです。

パナマは“ヒーピーハーパー”と呼ばれる
植物の繊維を細かく細かく裂いて、
手で編んだ帽子。
これはもう常識でしょう。

ところが同じ手編みながら、
手で編むのではなく、
カギ編みで仕上げた帽子があります。
つまり「カギ編みパナマ」とでも言えば良いのでしょうか。
もちろんメイド・イン・エクアドル、本物のパナマ帽です。

これまでにもカギ編み帽はあったそうですが、
主として婦人帽。
この手法が紳士帽に採用されたのは、
ごく最近のことでしょう。
カギ編みですから、
通常のパナマにくらべてややざっくりとした感じ。
色もオフ・ホワイトというよりは
ベージュ色に仕上げられています。

ついに私がこれを買ってしまった理由は、
脱いだ時にはくるくると巻いて
ポケットに入れておけること。
元に戻せば、しっかりと形が保たれています。
まるで魔法のようなパナマ帽です。
「トラヤ帽子店」(TEL:3535-5201)で
16,000円で売っていますから、参考までに。


←前回記事へ

2003年7月26日(土)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ