服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第295回
さあ、涼しさをつくりましょう

ふだんの生活のなかで何か涼しい工夫をしていますか。
冷房のスイッチにさわっているだけ、
というのはちょっと味気ないですね。
せめて頭の中だけでも涼しくしようではありませんか。
いざ、涼しさの空想旅行へ。

むかし花氷というのがありました。
覚えていますか。
氷柱とも言います。
百貨店の正面入口を入った所などに、
大きな氷の柱が置かれていました。
ただの氷ではなくて、なかに生花などを飾って美しい。
もちろん氷ですから、少しづつ溶けながら冷気を発する。
けれども百貨店全体を冷やすわけではありません。
やはり見て涼しさを楽しむものでしょう。
暑い外から入ってきた客のなかには、
手や顔を直接花氷にくっつけている人もありましたね。

氷柱のなかに、花ではなくて
金魚を入れることもあったそうです。
氷柱の一部を中空にして、
そこには水を入れておいたのでしょう。
ちょっと見れば、氷のなかで金魚が泳いでいるように見える。
たしかにこれは涼しそうです。
今度、冷蔵庫で大きめの氷のたかたまりを作って、
家庭用花氷を置いてみませんか。
氷が溶けてしまえば水盤で、
ただ水の上に花びらが浮いているだけ。
これもまた目に涼しいのではないでしょうか。

もし経済力があるなら、
大うちわをいくつか用意する。
まあ、少なくとも畳半畳くらいの大きさ。
もちろん自分で風を送ることはできませんから、
大うちわ担当者を数人雇う。
右と左、ふたりづつあおがせて、
疲れたなら次の者に代る。
これは涼しいでしょうね。
私の経済力なら、扇風機を使って、
大うちわの風を想像することでしょうか。

それからまた風鈴も涼しさを呼ぶものです。
涼しい音を聴いて、涼しさを味わう。
これはかなり高度な納涼法です。
でも、まずはじめに風鈴を吊して
似合う家から用意しなければなりませんからね。

少し暗くした部屋のなかで、
低く静かに宗教音楽を聴く。
たとえばグレゴリオ聖歌とか
あるいは人によっては滝の音などの
環境音楽という方法もあるでしょう。
少しは涼しくなりましたか。


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2003年7月15日(火)

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