服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第214回
服装のセンスを磨く方法

今回は、日ごろご愛読下さっている
読者の山田さんからいただきましたご質問
「服装のセンスを磨く方法は?
鈍く光っているものを持った服装、品格を出すには?」
についてお答えいたします。

『懐旧九十年』という本を読んだことがありますか。
これは名医とうたわれた石黒忠悳(ただのり)が、
昭和11年に著したものです。
今は岩波文庫に入っていますから、
簡単に読むことができます。

<<ついで服装を見る、これはその人の
 平生(へいぜい)の身たしなみ、心掛けが現れる。>>

石黒忠悳(ただのり)は安政6年(1859年)15歳で旅に出る。
旅中の宿でたまたま大島誠夫という人物と相客になる。
その時の様子を書いているのです。

<<武士の心得として、初対面の人に対しては、
 先ずその顔色を見る。>>

なにしろ今から百数十年前のことですから、
時代がかっているのは当然のことでしょう。
忠悳(ただのり)は父、良忠から武士の心得として、
相手を瞬時に見抜くよう教えられたというのです。
そして服装には心掛けがあらわれる、と結論したのでしょう。

平成の時代に生きる我われが
武士であるかないかはさておくとして、
服装と心掛けの問題は今も昔も変りがないと思います。
服にはその人の心があらわれるのです。

おしゃれも、センスも、品格も
すべては心掛け次第だと思います。
今、自分が着ている服は、
自分が納得して選んだわけですから、
その服を通してあるい程度、推測されても仕方がない、
ということになります。

では、いったいどうすれば、センスが備わるのでしょうか。
それはやはり日頃の観察だと思います。
センスの良い人をじっくりと観察する。
なぜ、センスが良いと感じさせるのか。
いったいその原因はなになのか。
このような観察をつづければ、
必ずいつかセンスの良い人になれます。
悪い例は見なくても良いのです。
自分がいいなあと思った良い例を強い関心を持って観察する。
これが一番の近道でしょう。

実は、自己満足が最大の敵なのです。
自分にはセンスが足りないと感じることが、
最良の出発点なのです。
山田さんは大いに可能性があるわけです。


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2003年4月25日(金)

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