服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第154回
スェーターの似合う人になるために

スェーター・ガール sweeter girl
という言葉を知っていますか。
これはアメリカ的な表現で、
「グラマーな女の子」といった意味になります。

むかしラナ・ターナー(1920〜1995年)
というアメリカの女優がいた。
1937年、彼女は『ゼイ・ウォント・フォゲット』
という映画に女学生役で出演した。
この時、身体にぴったりとフィットしたスェーターを着ていて、
評判になった。
その後、ある広告写真でも同じくスェーター姿で登場した。
ここから彼女のことを“スェーター・ガール”と呼んだ。
1939年頃のことです。
それは一種の流行語のようになって、
以後“スェーター・ガール”は
グラマーな女性を指す言葉となったのです。

自分の服装や着こなしから出発して、
新語が生まれるのは、さぞかし良い気持でしょう。
でも、たとえ言葉は生まれなくても、
服はその人のスタイルとなることがあります。
たとえば、常に赤いスェーターだけを着ていると、
いつの間にか「赤いスェーターの男」
というイメージが作られるように。

今、私はピンクのスェーターが着たい。
黒や紺は上着でも着ることができる。
でもピンクはスェーターなら許される色です。
心からスェーターの着こなしを楽しむなら、
明るい色、華やかな色、好きな色を
なにかひとつ見つけることをおすすめします。

よく「7色のカシミア・スェーター」ということを言います。
同じデザインのカシミア・スェーターを色違いで7枚もっている。
もちろんこれもおしゃれなことですが、
ピンクやバイオレットなど意外な色調を素材違いで
7枚揃えておくのもすてきなことではないでしょうか。
仮にピンクと決めたなら、
同じピンクでも良い色とそうでない色があることに気づく。
つまりちょっとしたピンク通になれる。
その結果として、ピンクのスェーターの着こなしが上手になり、
「ピンクが似合う人」と言われるようになるわけです。


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2003年2月24日(月)

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