| 第58回格調高く、心ゆたかに着こなしましょう
 チェスターフィールド・コートというのがあるのを知っていますか。
 chesterfieldと書いて
 れっきとした単語でもあります。
 これは1830年代の英国のしゃれ者であった、
 第6代チェスターフィールド伯爵に因んでいます。
 少し乱暴な表現をしますと、背広の丈をうんと長くしたようなスタイルのものです。
 背広襟で、前開きは隠しボタンとなっています。
 胸ポケットも袖ボタンもちゃんと付いていて、
 場合によっては上襟に黒ビロードが
 あしらわれることもあります。
 チェスターフィールド・コートは誰でも一着持っておくべきコートではありません。
 しかしこのコートの面白い点は
 現在のコートのなかで
 もっともドレッシーな存在であることです。
 これ以上はないと思うほどドレスアップした時でも、
 これさえあれば迷うことはありません。
 堂々とチェスターフィールド・コートを
 羽織っておけば良いのですから。
 しかし、もしコートを新調しようという計画がおありなら、チェスターフィールド・コートを注文してはいかがでしょうか。
 なぜならチェスターフィールド・コートは
 なにもフォーマル専用ではなく、
 ビジネス用はもちろんとして、幅広く着ることも可能なのです。
 ところで生地はなにを選ぶべきか。私ならぜひともカシミアを選びたいところです。
 チェスターフィールドはコート丈が長いので、
 生地が重いとコート全体もやや重くなってしまうからです。
 でも、カシミアやビキューナなら軽くて、しかも温かい。
 ただし値段は少し張りますが。
 並みのコートをあれこれ枚数を持つより、これぞ逸品というコートを大切に、
 何度も着るほうが結局は得なのではないでしょうか。
 チェスターフィールド・コートはやはり黒、
 濃紺という色が中心になりますが、
 時にはこのコートに白いタートルネック・スェーター姿で
 着こなしてみるのも粋なものだと思います。
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