服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第41回
袖ボタンで愉しむ法

あなたの上着の袖ボタン、いくつ付いていますか。
2つ、3つ、4つ。
ときに1個ということもありますが、
5つボタンは聞いたことがありません。
たいていは3個または4個という場合が多いようです。

むかし軍服の袖口にボタンを付けたのは、
かのナポレオンだと言われています。
部下が袖口で鼻水を拭かないように、
そのまわりにボタンを並べたのです。
やがて軍服が市民服となって、水仕事などに便利なよう、
袖口が開閉できる、今の位置へ変っていったのです。
つまり袖口のボタンもむかしは飾りではなかったのです。
実際に開け閉じできるようになっていました。

今でも「本開き(ほんあき)」と呼んで、
袖ボタンで開閉できるようになったスタイルもあります。
「昔ながらのやり方で、丁寧に仕立てていますよ」
というわけなのでしょう。
どちらかといえば註文服に多いものです。

ところで同じ「本開き」でも、英国の男は
開けることを好まない。
一方、フランスの男は袖ボタンを外すのを好む傾向があります。
考え方の違い。どちらが良い、
どちらが悪いというものではありません。

イギリス式かフランス式か。
まあ、主義の問題ということになるかも知れません。
余談ですが、私の場合は
左側の袖ボタンを2つ外すことにしています。
え〜と、主義と致しまして。

もし今度スーツなどを新調する機会があった場合、
「袖先を本開きで」と頼んでみてはどうでしょうか。
もっとも最近ではプレタボルテでも
意図的に本開き仕立てにしているものも
珍しいことではありません。

ボタンを外すも外さないのも自由ですが、
こんな小さなところにもお愉しみのネタが
隠されていることを言っておきたかったのです。
「服は遊びにあり」と割切るなら、
もっともっと新しい視点がひらけてくるはずです。
さあ、袖ボタンで遊んでみましょう。


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