服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第32回
ジーンズには懐中時計がよく似合う

チョッキはなかなか味わいのある装いです。
着て楽で、暖く、また粋でもあります。
そしてチョッキを着た時のなによりのアクセサリーが
懐中時計なのです。
むかしの紳士たちが最後までチョッキを
手離そうとしなかったいちばんの理由は、
懐中時計を入れておく場所がなくなる、というものでした。
懐中時計は古くさい、と決めつけずに、
たまにはクラシックな味わいを見直そうではありませんか。

懐中時計の収納場所として
誰もがチョッキのポケットを思い浮かべます。
でもチョッキ以外にも様ざまな使い方があるのです。
たとえば上着の胸ポケットに入れておくのも、
おしゃれなやり方です。
背広の襟穴にチェーンを通して、時計全体は胸ポケットに入れる。
するとこのチェーンがなによりの
アクセサリーとなってくれるのです。

あるいは上着のチェンジ・ポケットを利用する方法もあります。
右側の脇ポケット、そのすぐ上に
小さなポケットがもうひとつ付いていることがありますね。
それがチェンジ・ポケットです。
くさりの環をボタンの糸の部分に通して留め、
懐中時計をチェンジ・ポケットに入れておく。
もしチェンジ・ポケットのない場合は、
通常の脇ポケットに入れても良いでしょう。

もちろんパンツ(ズボン)の脇ポケットに
入れることもできるでしょう。
ベルト・ループや、ベルト自体にチェーンをからませて、
ポケットに入れておく。
時折、ベルト・ループの下に
小さなポケットが付いていることがありますが、
これは”フォブ・ポケット”で
昔、懐中時計を入れた名残りなのです。

チェーンの代りに絹の組紐を使うこともあります。
ノミの市などで探すと、
面白い掘出しものに出会えるかもしれません。
ジーンズの右脇に小さなポケットがあります。
これもフォブ・ポケットで、
本来は懐中時計を入れるためのポケットだったのです。
ジーンズに懐中時計というのも面白いでしょう。


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