第128回
神様の食べものは誘惑の味
パティシエは
最後にチョコレートを目指す
と訊いたことがあります。
そういえば
ショコラティエやチョコレートブティックといわれる
チョコレート専門店も
年々、増えているような気がします。
チョコレートは
食べ手にとっても、そして作り手にとっても
知れば知るほど魅惑的な
媚薬のような食べもの。
古代からそれは
媚薬や薬、通貨、王様への献上品や儀式に使われたりする
かなり高貴な存在だったようです。
あるパティシエは
チョコレートの愉しみを
「ワインのようなものだ」
と言ってました。
赤ワインに
香りや味わいの違いがあるように
チョコレートにもまた
デリケートで、しかし歴然とした違いがあると。
それは
苦味・酸味・甘味・渋味、
あるいは塩分などの味覚であったり、
アロマ、舌触り、色、輝き、風味などであったり。
では、その違いはどこからくるのか
というと
ワインなら葡萄ですが
チョコレートは、カカオ豆からきます。
カカオ豆は、
産地、種類、栽培地の土壌と気候、発酵方法などによって
さまざまな個性をもち
さらにチョコレートになるときには
それらを
ブレンドしたり、しなかったり、
豆の使用率によっても変化してきます。
パティシエは
カカオからチョコレートを作るわけではなく
そうして作られたチョコレートを材料に
お菓子に使ったり
チョコレート菓子を作ったりするわけですが
そうなるともう
チョコレートの可能性は無限大で
そんな奥深い世界もまた
職人魂を刺激するのでしょうか。
カカオの木は
テオブロマ・カカオという学名で
テオブロマはギリシャ語で
「神様の食べもの」
という意味なのだそうです。
神様の食べものは、遙かマヤ文明の昔から
何千年もの間
人間を翻弄し続けているのです。
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