| 第126回甘みの記憶
  至福のイタリア語教室(第125回参照)では思いっきり堪能しているものの、
 じつは普段の私には
 甘いものを食べる習慣がほとんどありません。
 お酒と因果関係があるのかないのかちょうど20歳を過ぎてから
 甘いものに関しては
 わりと冷静でいられるようになりました。
 けれど、もともとは決して嫌いなわけでなかったんですよ。
 ひと通り、歴史ももっています。
 学生の頃はレストランやホテルの
 デザート食べ放題に通って最大24個食べましたし、
 高校生の時にはミスド(ミスタードーナツ)の
 チョコファッションにフレンチクルーラーが定番でした。
 放課後、駅前の喫茶店で男の子や洋服や進路や部活の話をしながら
 友達と食べたのは
 金魚鉢みたいなガラスボウルに積み上げられた
 なんでもありのチョコレート・パフェ。
 はじめて、親の同伴無しで繰り出した夏祭りには
 禁止されていたコーラと
 カラダに悪そうな色のチョコスプレッドを散らした
 バナナのチョコレートがけを食べて
 ある種の達成感も味わいました。
 中学の部活の帰りにガリガリ君をかじりながら、友達と遠回りして帰ったこと。
 小学生の頃、
 チョコフレークで手をベトベトにして
 山口百恵の映画を観たこと(シリーズ毎回)。
 幼稚園くらいのころは「おやき」。私の知っているそれは
 長野の「おやき」と少し違って
 薄皮の大福をペタンコにして、炉で焼いたようなもの。
 皮の粉っぽい焼き目が香ばしく
 つぶあんの甘みが素朴な、雪の街の味。
 母が好きでよく買っていた店の場所を
 一緒に行くうちに覚えてしまい
 それ以来、園児の私は
 通りかかるたびに使命感に燃え、せがんでいたような。
 人生、しょっぱいこともいろいろありましたけどこうして
 甘いものにまつわる記憶を辿っていくと
 そこにいる私は
 そういえば、わりと幸せです。
 甘みとは、そういう感じを与える味覚なのでしょうか。
 あなたはかつて甘いもののまわりに、何がありましたか?
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