至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第111回
イタリアから帰ったコックたち

イタリア料理を学ぶため
コックたちは次々と海を渡り
数年間の修業を終えて
今も続々と日本に帰ってきています。

第55回「チャンスに飢えたコックたち」でも書きましたが
彼らの多くは
決して順風満帆というわけではありません。
帰国後に
シェフ、あるいはオーナーシェフとして
店を構えたいと望んでも
ほとんどの場合
彼ら自身にはお金がありません。

そこでスポンサー、あるいは雇い主を
探すことになりますが
しかし
イタリア滞在中にそれが見つかったり、
帰国後すぐにチャンスに恵まれるようなコックは
本当にラッキーで
たいていは厳しい現実に直面することになります。

シェフでなく、
一介のコックとして雇われるのでもいいと
思っていた人でさえも
「イタリアでの経験を生かしたい」と
考えれば考えるほど
それを認めてくれる、また雇用条件の合う店を探すのは
極めて難しいようです。

中途半端に
合わないイタリア料理店で働くよりいい、と
チャンスに恵まれるまで
居酒屋、洋食店、カフェ、バー、まったく別の職業の
アルバイトで“つなぐ”人や
イタリアが恋しくなって再び修業に行く人もいます。

日本に帰ってきて
調理場を失ったコックの中には
「何のためにイタリアで修業してきたのか。
今の自分は、まるで死んでいるようだ」
と呟いた人もいました。
日本での居場所がないということは、
イタリアで
どんなに認められ、やりがいのある
仕事をしていたとしても、
いや、イタリアでの生活が充実していた人ほど
つらいことです。

けれど
どんな世界でもシビアな現実はあるもので
その中で
自分なりのやり方で
なんとか道を切り拓いていこうという人も
必ずいるものです。

今、何本もの道ができてきました。
自分なりのやり方を探して
シェフとして歩き始めたイタリア帰りのコックたちを、
今週は少し紹介したいと思います。


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2004年5月24日(月)

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