至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第89回
夜桜眺めて、チェリービール

年下の女友達から
「チェリービール付き桜見学会」
のお誘いがありました。
池袋から歩いて5分ほどの場所に
自由学園 明日館(みょうにちかん)なる洋館があり、
建物も、桜もとても素敵なのだとか。
その、夜桜の見学会に
チェリービールがついているのだそうです。

桜と建築と、そしてもちろんビールにつられて
ケータイメールで「行く行く!」と返信し
春の宵、女二人でウキウキ繰り出しました。

池袋は、メトロポリタンホテルを越えると
急に閑静な住宅街に入ります。
そこに、これまたタイムスリップしたような
洋館がポコッと現れました。

明日館は、1921年(大正10年)に建てられた
自由学園の校舎であり、
関東大震災や第二次世界大戦の戦火を逃れた重要文化財。
設計は、帝国ホテルを手がけたことでも有名な
巨匠フランク・ロイド・ライトです。
シンメトリーな構造、幾何学模様の窓、六角形の椅子、
モダンな照明、木と石の素材感など
ディテールの一つひとつが美しい。

入り口で購入した見学券を渡し、
チェリービール&おつまみ(日本酒も2種類有。
お酒付き見学券は1000円、喫茶付きは600円)
を受け取って、庭に面した席へ。
そこにはライトアップされた夜桜が4本。
見事な枝振りと、その冴え冴えとした美しさに
思わず足が止まります。

ビールは、
ベルギーのランビック(自然醗酵)タイプである
「サン・ルイ(=セント・ルイス) クリーク ランビック」。
熟成中に、クリーク(さくらんぼの一種)を
漬け込んだビールだそうで
ひとくち飲めば
さくらんぼの香りと甘さ、ランビックの酸っぱさが
ふわっと広がって、
冷たくなりかけた夜風に心地いい。
瓶のまま飲んだので
泡立ちや色はわかりませんでしたが
昔、子どもの頃に飲んだ
炭酸の赤いジュースを思い出しました。

すぐそこには
サンシャインビルがそびえ立っているのに
ここだけは大正時代の空気が流れているような、
そんな旧校舎の庭で
かつて子ども達が使った、木の小さな椅子に腰掛けて
今年最後の桜と
懐かしい甘酸っぱさのチェリービールを
ふわふわ味わう。
こんな静かなお花見もいいものです。


■自由学園 明日館
東京都豊島区西池袋2-31-3 TEL 03-3971-7535
※今年の桜見学会は終了。通常の見学は可能です。


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2004年4月22日(木)

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