至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第78回
日本のイタリア料理はどこへ行く?

日本では、十把一絡げに
「イタリア料理」といわれますが、
ご当地イタリアでは、地方の伝統料理が基本。
さらに言えば家庭料理、マンマの味が原点です。
当然
地方によって使う食材も、料理法も違いますし、
厳密に言えばその中の地域でも
変わってきます。
考えてみれば、
もともと別々の皇国、王領の集合体ですから
当然なのかもしれません。

つまり現地では
たとえば、ピエモンテとトスカーナの伝統料理が
ひとつの店の同じメニューに載っているという状況は
まず無いと考えていい。
ただし
クチーナ・ヌオーヴァ(新しい料理)の店などで
さまざまな技法や素材を取り入れたり、
シェフが自分なりの解釈で料理を再構築する
というのはまた別の話ですが。

しかし今、日本のイタリア料理店で
純粋に特定の地方の料理だけをメニューに載せている店は
滅多にありません。
ピエモンテもあればトスカーナもあったりする
いわば、ちゃんぽんのイタリア料理店が多い。
それが良いか悪いかではなく
現実として、そうなっています。

それは
創生期のシェフ達が言うには
「日本にイタリア料理というものを
広く紹介する必要があった」
とのことですが、紹介され尽くした現在の状況を見ると
私見ですが
日本人コック達がイタリアで修業するとき
限られた期間にできるだけいろんな地方を見たいと、
多くの場合
トータル3年前後内で、数カ月ごとに土地や店を移るから
というのも理由のひとつではないかと思います。

たとえ本国の
伝統料理店のあり方を知っているコックであっても
日本に帰れば、
彼らは、転々とした修業先の地方やその店の
いいところを取り入れてメニューを組み立てる。
イタリアの伝統料理を
そのため日本のイタリア料理店のテーブルには
各地方の文化が載ることになります。

それは、たとえば
秋田のきりたんぽ鍋と沖縄のチャンプルを
同じ店で食べ、「これが日本料理」と
認識するようなものですが
しかし異文化圏の食べ手にとっては
そんな違和感はどうでもいいのかもしれないし、
日本でイタリアをそのまま再現する必要はない
という意見もわかる気がします。

考え方はいろいろあるでしょうが
ただ、そろそろ
同じ店で四季を見なければわからない
と考える者や
同じ地方に何年も留まる者、
イタリア修業に5年、10年の歳月をかける者も現れて
その地方に特別なこだわりと
愛着をもつコックが増えてきました。

またイタリア料理店が飽和状態といわれる日本では
生き残るための差別化も必要になってきています。
そんな流れの中で
限定された地方の伝統料理だけを提供するお店も
増えてくるかもしれませんね。


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2004年4月7日(水)

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