| 第19回『ペンギン食堂』の石垣島ラー油
 
 石垣島にある『ペンギン食堂』という餃子店で
 辺銀(ペンギン)さん(本名です)が手作りしている、
 その名も石垣島ラー油。
 普通のラー油を想像したらいけません。
 石垣島ラー油のジャンルは、石垣島ラー油。
 島唐辛子、春秋ウコン、ピィヤーシ(第16回参照)、
 石垣の塩、黒糖、にんにく、白ゴマ、黒豆などで作られていて
 辛みや甘み、香り、味わいが複雑に絡み合う、
 このバランスはまさに黄金律。
 辺銀さんの奥さんのレシピをもとに
 島の食材を使って研究を重ねたのだそうです。
 食材の粒々がたくさん沈殿しているので、使うときはよ〜く振って、粒々もろともいただきます。
 餃子に合うのはもちろんですが
 私の場合、ドレッシングに使ったり、肉料理の隠し味にしたり
 チャンプルに入れたり、白髪ネギを添えたお豆腐にも合います。
 辺銀さんはもともと、餃子などの粉料理が豊富な中国・西安の生まれで、
 東京でカメラマンをしていたそうです。
 編集の仕事をしていた奥さんと一緒に
 石垣島に来たのは、
 ご主人は島のおじい、おばあを撮るため
 奥さんは琉球和紙の勉強をするためだったとか。
 が、アルバイトがきっかけで店を開き
 島餃子(島ラッキョウ、島ニラ、ヨモギ、ウイキョウ、ニガナ、
 ゴーヤ、浜ほうれん草、ホービーガンジュなどで作る餃子)や
 石垣島ラー油を作っていたら瞬く間に口コミで評判となり
 売って欲しいという人が増え、売り出したらマスコミに登場し、
 今に至るというわけです。
 ただ本業の写真がなかなか撮れなくなって、
 ちょっとびっくり→うれしい→でもたいへん→だけどうれしい
 というチャンプルな状態だそうです。
 それでも、辺銀さんのラー油には彼にしかできない仕込みがあるそうで、いくら売れても、
 お客に1ヶ月〜3ヶ月待ちをお願いすることになったとしても
 「作れる分しか作れないので」と
 申し訳なさそうに、しかしきっぱりと量産を拒みます。
 私が石垣島を訪れたときは、ちょうど奥さんの出産時期にあたり、
 餃子店は休業中。ラー油づくりに専念していたので
 残念ながら島餃子を現地で食べることはできませんでした。
 ちなみにあれから、男の子が生まれたそうです。
 この島に来て、辺銀さんの人生は思ってもいなかった方向に流れ出しました。
 写真を撮りに来て、まさか餃子やラー油を作るとは。
 東京では10年間子どもができなかったのに
 ある日突然、授かるなんて。
 石垣島ラー油は「食は命薬(ぬちぐすい)」がモットーだそう。石垣島の食べものは、まさに医食同源。
 亜熱帯の激しい太陽と、強い風と、
 澄んだ水と、濁りのない空気はもちろんですが、
 それだけでは説明のつかない不思議な何かによって
 この島の食材たちには
 体を癒したり、元気にする力が
 与えられている気がします。
 2004年は、お店の再開(期日は未定)、ラー油づくり、カメラマンとしての仕事、そして子育てと
 ますます忙しくなりそうな辺銀さんです。
 ■ペンギン食堂
 沖縄県石垣市大川199-1 TEL/FAX 0980-88-7030
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