第9回
閑古鳥が鳴いていた国
ある時、
アジアの各国の証券関係のデータを調べていて驚きました。
東南アジア全体に
株価収益率(PER)は低くなっているのですが、
中でもタイが低い。
アジア危機のおかげでタイは危なそうに見えるのでしょう。
バーツ危機でタイは多くのことを学びました。
今は東大で活躍しておられる伊藤隆敏氏は
アジア危機の時には直前までIMFに勤務しておられ、
その後タイ王国大蔵大臣特別顧問としても仕事をされました。
現在の副総理のソムキッド氏の手腕もなかなかのものです。
私が2001年にタイを訪れて
証券取引所と証券会社、図書館に通って調べたとき、
上場企業の株価収益率(PER:株価÷1株当たり年間の利益)は
なんと5倍程度。
株価純資産倍率(PBR:株価÷1株当たり純資産)は1.3でした。
信じられますか?
企業が同じ収益を今後も上げ続けるなら、
5年程度で株価分の収益を出してしまう勘定になります。
東証1部やニューヨークと比べて桁がひとつ違います。
ちなみに2003年3月現在では
タイ証券取引所のデータによれば
株価収益率6.52、株価純資産倍率1.34です。
1997年から始まったアジア危機のお陰で、
株式市場はしゅんとして証券会社は閑古鳥が鳴いていました。
1993年頃からだらだらと株価は下げていましたから、
反転するとは誰も考えていないようでした。
1993年頃には1700位まであった指数(SET指数)が
280くらいをうろうろしていたのです。
(2003年5月現在380前後)
私がこの国の経済が好転するのではないかと
思った理由には、別の体験もあります。
ある日、バンコックのルンピニー通りを通りかかった時、
建設途中のコンドミニアム(マンション)を見つけました。
売れ行きを聞いたらすでに大部分が売れています。
値段は現地の人には途方もない大金の、
150万バーツ(約450万円)もするのです。
「お金は動いている」と感じました。
こんなわけで株価は安いが景気は底打ちが近いと感じたのです。
|