第1214回
■ダイハードさんからのQ(質問):もう小説は書かれないのでしょうか

はじめまして 邱永漢先生。
先生のご高名は、
わたしが大好きな開高先生の著書『最後の晩餐』のなかの
「天子の食事」をよんで存知あげておりました。
そのとき以来、邱先生の『香港』をぜひぜひ一読したく思いながら、
未だその機会を得ず、残念でなりません・・・。

さて、きょうは率直にお聞きしますが、
実業家・お金の神様で知られる邱先生は、
もう小説をお書きにはならないのですか?
台湾〜香港〜日本と、亡命生活をふくめて
グローバルにご活躍の先生の人生観・金銭観などは、
フィクションの形によって、
また新たな視座をわたしたちに提供していただけるはず
だと思うのですが、この点いかがでしょうか?

最後に季節の変わり目につき、お体ご自愛くださいますよう。


■QさんからのA(答え)

私の直木賞を受賞した「香港」という小説は
中央公論文庫の中にもありますし、
「邱永漢ベストシリーズ」という
全50巻の実業之日本社から出ている全集の中にもございます。
おそらく古本屋に行けば、
手に入る可能性はあるんじゃないでしょうか。

私のそのころの小説に親しんでくれた方は、
例えばいま私がこのホームページで
書いているようなことに対しては、
堕落と考えている人もおります。
かつて私が「日本人の堕落」というタイトルの本を書きましたら、
すぐ私に「邱永漢の堕落」、という手紙をくれた人もございます。

そういう意味では小説の愛読者と、
社会問題や経済問題やお金儲けに
興味を持っている人たちの評価にはかなりのズレがあります。
私が小説を書かなくなったことを
もったいないと言ってくれる人もいますが、
口の悪い大宅壮一さんに、
「あれはメンスと同じだ、適当な年になったらアガるんだ。」
と、私が小説で賞をもらったばかりのときに
言われたことがあります。
そうかなあと思ってたんですけど、
年輪を重ねると思い当たることも多々あります。
小説の発想と実利の発想は
生活のリズムも物の見方も皆違いますので、
もしまた私が小説を書くということになったら、
今やっている仕事も生活のやり方も
辞めなきゃならないと思います。
もうこの年ですから、構想だけなら幾らもあるんですけど、
多分実現しないで終わるでしょうね。


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