第1097回
■ゴリオさん
からのQ(質問):国境破故郷在

金言名句にお書きになっている「国境破故郷在」
日本のグローバル化を見事に表していてすばらしいと思います。
故郷の印象ですが、
日本人(私)にとっては生まれ育った土地の自然風土です。
幼少に遊んだ兎追いしかの山であり、
こぶな釣りしかの川です。
「国」も自然山河を含んだ国土であり、
システムとしての国家では違和感を覚えます。

欧米人、中国人でも
この感覚は日本人とはだいぶ違うように思いますが、
都会人と田舎者の差かも知れません。
丸谷才一さんは先生のことを亡国の民の先輩と称しましたが、
都会人としての先輩でもある先生は
このことをどうお感じになりますか?


■QさんからのA(答え)

私の書いたものの中に
「人間は自分の故郷では出世しない」
というのがありますけど、
日本の国を見ても、東京大阪で事業に成功したり、
学問的、あるいは芸術的に有名になった人で、
都会生まれの人は少ないようです。
皆よそから来た人たちです。
香港で一番お金持ちは李嘉誠という人ですが、
あの人は香港の人ではありません。
中国大陸の潮州の人なんです。
世界中同じだと思って間違いありません。

いまは舞台が広がったんですから、
よその土地の人が中国に行って中国で一番金持ちになる、
ということだって起こりえます。
政治家だけはその土地の人に支持されないとダメですけど、
経済をやる人はよそから来た人で間に合います。
でもそういう人たちだって、
自分の生まれ故郷があるわけですから、
故郷のことを頭から全然どけちゃうということは無いでしょう。

私はたまたま台湾に生まれましたから、
人生の初めからハードルが一杯あって、
そのハードルを一つ一つ飛び越えることしか
頭にありませんでした。
ですから人と人を差別する国家なんか
早くなくなればいいと思ったものです。
世の中段々私が考えていたような方向に動いてきましたが、
今も国境に固執してケンカをしたがる人が一杯います。
でも5年経ち10年経ち20年経って、
国境を気にしない人ばかりになったら、
世の中大分変わるんじゃないでしょうか。
私の言ってることは少し早すぎるので
奇異に聞こえるかもしれませんけど、
もう少し時間を貸して下さい。


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