第281回
■S・TさんからのQ(質問):どうやって整理しているの?

週に何本もの締切を抱えながら、
1度も原稿を遅らせたことがないというその秘訣はなにですか。
又、並行していくつものお話を書いているようですが、
時には頭がこんがらがることはないのですか?
どうやって整理しているのでしょうか?


■QさんからのA(答え)

連載原稿をたくさん書いていても
締め切りに遅れない秘密はなんですかということですが、
私はいついつまでに原稿を書くと約束した以上、
手形を切ったのと同じでその日になってから落ちない
という訳にはいかないと思ってやってきました。
従って半世紀、1回も約束をたがえたことはありません。

また、頭の中がこんがらがらないかと心配されているようですけど、
実はよくこんがらがります。
たくさんの原稿を抱えている人は
たとえば私の知っている人で言うと檀一雄さんは
新聞に「木曾義仲」という時代物の小説を書いていた時、
書いている途中で主人公の名前が
変わってしまうということが起って、
それもいっぺんに変わらなくて、名前の方が先に変わって、
そのうちに姓の方まで変わっちゃうといって
大笑いをしたことがあります。
また主人公が馬から落ちて死んでいるはずなのに、
翌日、切腹しろと言われるという場面が出てきて、
新聞社から電話で、先生、主人公はもう昨日死んでるんですけど、
と言われて頭を抱えていたこともありました。

私も一番多いときは16本も原稿を書いておりましたから、
こんがらがらないように努力をして、
どの連載はどこまで書いたかというメモをちゃんととっています。
それでも、細かいところは覚えておりませんので、
一冊の本になるまでに
同じことを三回くりかえしたことがあります。


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