死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第99回
四十一歳は、自分の将来を考える”適齢期”

最近、私は「サラリーマン五十五歳厄年説」
というのを唱えています。
最近の定年はほとんど六十歳でしょう。
定年の日を迎えてから、
クヨクヨする人は少ないんです。

だいたい、そのすこし前ですから五十五歳ぐらいで、
ノイローゼになってしまうのです。
しかし 、五十五歳になってから老後を考えるのでは、
いかにも遅すぎます。
やっぱり、考えるとしたら、
四十歳あたりからでないと十分な対策はできないでしょう。

もちろん、考えるだけでなく、
準備を始めることがたいせつなんですけれど、
これが、またむずかしいんですね。

老後のためにちゃんと貯蓄できるような人は、
三十代から、貯蓄の習慣が身についているから、
さして抵抗なく貯金の額をふやしていくこともできます。

残念なことに、そうじゃない人がけっこう多いんです。
おれはそんなみみっちい生活はできないとばかりに、
若いころから遊んで暮らしてきた。
あるいは、おれは金を貯めるより
仕事に必要な知識や技術を貯めるんだといって授業料を払い、
自分なりに勉強してきた。
こういう人たちからみると、
若いころからコツコツ貯蓄している人は、
どうにも小物にみえて仕方がない。

そういう生活をしてきた人が四十歳になったからといって、
すぐには切り換えはききません。
結局、老後になって残っているのは、
むかし授業料を払って
おぼえたことだけだったという人が多いんですね。

いまは細々ながら年金も出ますし、
餓死するようなことはありません。
老人ホームにはいって、けっこう愉快にやっている人もいる。

演芸大会で、むかし習った小唄かなんかを披露して、
拍手喝采を浴びる人もいるでしょう。

しかし、厄年になって将来のことが気がかりになったら、
やっぱり、そこで何がしかの対策を
講じたほうがいいに決まっています。

お金を貯めるのが苦手なら、
せめて第二の人生のプランニングを、
具体的に立て始めるのもよいでしょう。

これだと思う道が見つかって、
そのためには、どうしてもこれだけのお金が必要となったら、
今度こそ頑張って貯めるよりほかに方法はない。
そのくらいの努力をしなければ、
いい老後は望めないんじゃないですか。





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2013年7月12日(金)

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