死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第84回
百万円を貸すより、十万円くれてやる

ただ、これまでのつき合いというのがありますから、
むやみに断われない場合もあります。
そういう場合は、もし百万円貸してほしいと頼まれたら、
十万円あげる覚悟で提供するのも、
ひとつの方法でしょう。
また、一回目は貸してあげるが、
二回目にはきっばりと断わるというのも方法です。

いずれにしろ、友だちにお金を借りに来るということ自体、
あまり感心できるものではありません。
事業を始めるのなら、そのための金融機関があるわけですから、
銀行を有効に利用するのがいちばんよい。

金持ちになる人は、
みんなお金を借りて成功しているのです。
そうした金融機関をうまく利用しきれない人は、
大きな事業はできないし、
お金に困るたびに友人のところに駈け込んだりすると、
遅かれ早かれ、金銭的に追いつめられてしまいます。

その結果、友だちとのつき合いがだんだんと悪くなり、
やがて離れていくということになってしまうのです。
断わり上手は借金にも必要ですが、
お酒のつき合いについても言えます。

友だちにお酒を飲みに行こうと誘われたとき、
二回、三回と断われば、
「あいつはつき合いが悪い」と文句を言われるかもしれませんが、
そのうちに誘わなくなります。
飲み屋のお金を払わないですむと、
ムダな出費がなくなるものです。

あるいは、お酒の席に誘われても
お金は出さないようにするといいかもしれません。

「あいつはケチでタダ酒ばかり飲みたがる」と評判が立つと、
相手も誘わなくなる。

この方法はあまりすすめられるものではありませんが、
そうでもしなければ、お金は貯まりませんね。





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2013年6月26日(水)

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