死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第54回
金儲けの上手・下手と、お金の貯まる・貯まらないは別

商売をやっている人の中には、
自分は金儲けが下手だからお金が貯まらないという人がいますが、
これは間違いです。
お金を儲けることと、お金を貯めることとは、別のことです。
金儲けがうまいからといって、
かならずしも金持ちになれるとは限らないのです。

早い話が、事業らしい事業を何もしないのに、
何千万円ものお金を貯めた人はたくさんいます。
食うものも食わずに飢え死にしたおばあさんが、
五、六千万円もの貯金通帳を残していたなど
という話が新聞に出ていますけれども、
これは、金儲けはできなくて、
金を貯めることができる典型です。

逆に、事業を手広くやって、
みんな成功しているのに、
いっこうに金が貯まらない人もいます。
こういう人は、お金を貯めるのが下手なんです。
一人の力で、事業もうまくやれてお金も貯まるというのは、
意外に少ないものです。

この違いはどこから出てくるのかと言えば、
はいる金と出る金のバランスと関係があります。
いくら事業に成功して大儲けできたところで、
はいってくるお金と出ていくお金が同じなら、
当然、お金は貯まらないでしょう。

使っても使っても使いきれないほど
お金がはいってくれば別ですけれども、
そんな人はめったにいないものです。
大企業の経営者とて、例外ではありません。

要するに、お金が貯まるかどうかは、
交通渋滞と同じと考えればいいんです。
出口が小さいと、自然に車が詰まってくる。
お金もそうで、ある程度の収入があって、
それを使わないようにすれば、
自然に貯まるわけです。
その貯まったお金をどんどんふやせるかどうかは、
また違う次元の話になります。

理想を言えば、
どんどん儲けて使わなければいいわけですが、
なかなかそうはうまくいかないんです。
何をやっても、最初からドッと儲かるものではありません。
しばらく我慢して、
お金をできるだけ使わないようにする。
それがある程度貯まってきて、
今度はふえるスピードが、
出ていくスピードより大きくなれば、
すこしくらい出ていくお金がふえても平気なんです。

私は、よく「金持ちになりたいなら、大きな会社は経営するな」
と言っています。
社員を何百人も何千人も使うようになれば、
出ていくお金がふえるだけで、
自分の手元にはお金は残らないものです。

これから、脱サラして商売を始め、
財産をつくろうと考えている人なら、
商売が成功することが、
そのまま金持ちになることではないという点を
肝に銘じておく必要があるんじゃないですか。





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2013年5月25日(土)

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