第33回
給料がふえたら貯金できるとは限らない
では、どのくらい収入があるようになったら
お金が貯まるものでしょうか。
ひと月にいくらいくらの収入があって、
その中から残った分を積み上げていけば、
お金はこのくらい貯まる。
そんなふうに考えている人が
多いんじゃないかと思うんですが、
じつは、そうではない。
たとえば、二十万円しか給料をもらっていない新入社員は、
給料が三十万円、四十万円になったら、
お金も貯まるだろうと思ったりするでしょう。
そうではないんです。
極端な話、給料が百万円になったとしても、
お金が貯まるとは限りません。
給料が百万円になれば、
三、四十万円は税金で持っていかれてしまう。
また、収入がふえれば、それに見合うだけ支出もふえていきます。
冠婚葬祭にしても、平社員は一万円ですむけれど、
課長は二万円、常務になれば
三万円は覚悟しなければなりません。
常務が三万円なら、つり合い上、
社長の五万円はまず逃げられません。
同じ会場に行って同じ食事をしても、
収入がふえると払うお金もふえるのです。
むしろ十七、ハ万円もらって、
独身貴族だったころより、
ずっと生活が苦しくなってくるんです。
お金なんていくらあっても足りないもので、
余るお金などないんです。
ですから、そのうち収入がふえれば
貯金もできるようになるだろうと考えていると、
一生、お金は貯まらないで終わってしまいます。
どの時期、どの年齢にあっても、
お金を貯めるには、余ったお金を残すというのじゃなくて、
お金のほうを優先的にとってはじめて貯まるんです。
貯める分を先にとるとなると、
やはり、ほしいと思うものをできるだけ買わない。
真っ先に支払うべきお金だと思って、
貯めるほうに回すようにしないとダメなんですね。
だいたいお金を使うときは、
誰でも優先順位を決めてかかります。
まず部屋代、電気代、電話代など固定したものから払う。
払わないと、部屋を追い出されるし、
電気や電話を止められてしまう。
家族のある人だったら、
子どもの幼稚園の月謝なんかも、
絶対優先するわけです。
そのあと、何に使うかは、
夫婦間の勢力のバランスによって違ってきます。
奥さんの発言権が強ければ、奥さんの化粧品のほうが、
ご主人の背広より優先するんですね。
町の商品店のオヤジに言わせると、
カッターシャツは、残業手当で買うものだそうです。
だから、景気が悪くなり残業手当が出なくなると、
とたんに男物は売れなくなるとこぼしています。
余談はさておき、お金を貯めようと思ったら、
その分は、化粧品や洋服より順位を優先させる。
意識的に、できるだけ上の順位にしなければならないんです。
そのために、しばらくは窮屈な思いもしますけれど、
そのくらいの我慢をしなければ、
お金は貯まらないということでもあります。
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