第13回
積極的態度が環境を変える
仕事をしている人は、
どんな環境におかれている場合でも、
必ず不満を持っているものである。
仕事が自分に向いていないことから起きる不満もあれば、
上司や同僚との人間関係が
うまく行かないことから起こる不満もある。
労働条件がきびしいわりには収入が少なすぎる
という不満のある場合もあろう。
これらの不満は、いずれも解決に困難を伴うものであるけれども、
解決のできない問題ではない。
しかし、そういう問題を前にして、
頭を抱え込んだまま身動きのできなくなる人もあれば、
なるべく考えないようにして
その日、その日をやりすごす人もある。
反対に努力をして何とか解決をしようと心がける人もある。
たとえば、苦手な仕事を振り当てられた場合、
それが本当に自分の手に合わない仕事であるかどうか、
よく検討してもみないで、
ただ一途に苦手と思い込んでふさぎ込む人もあれば、
何とかして苦手な面を克服して面白くやれる方法はないものかと
努力する人もある。
その結果、仕事が面白くなって蘇生した思いをする人もあれば、
どうにも仕方がなくなって配置転換を申し出たり、
それもきき入れられなくて職場を離れてしまう人もある。
また話のわからない上役にドカッと頭の上に坐られて、
それが原因で鬱々として楽しまなくなるケースもよくある。
そういう場合に、なるべく自分の本心をかくして
「休まず、遅れず、働かず」で抵抗する人もあれば、
一生懸命、ゴマをすって折合いをよくしようと努力する人もある。
そういう奴はハタから見ていると、
どうもゴマすりばかりして
いけすかない奴だと思いたくなるが、
本人は、「なあに、これくらいの上司も
丸め込むことができなくてどうする」とばかりに
「志は高く、頭は低く」と、人にはいえない
涙ぐましい努力をしているのかもしれないのである。
そうした努力の結果がうまく実を結べば、
その人は一応、問題を解決したことになるし、
仮にうまくいかなかったとしても、
何も努力をしなかった人より悪い状態にはならない。
しかし、そうした積極的な態度をもっていることが、
その人の環境を変えてしまうから、
そういう人は出世の道を歩むことになる可能性は大きいのである。
ということは、そもそも定年のある人もない人も、
定年に達するまでにくたばることが多いということであり、
会社に定年があるのも、もとをいえば、
そこに至るまでにくたばってしまった連中を
整理するためだとみることができる。
したがって、「死ぬまで現役」を貫くためには、
そのずっと前のところで、
まず定年までもたせるだけの努力が必要であり、
それができなければ、
その先の話をいくらしても仕方がないのである。
ではどうすれば、定年までもたせることができるのだろうか。
日本の国では終身雇傭制が常識化しており、
少なくとも、定年まではクビにならないのが普通だから、
よほどの大過がない限り、会社をお払い箱になることはない。
その代わり、どこの会社でも二軍に組み入れられた連中を
収容するための部屋とか、
閑職があり、俗にいう窓際族の存在が目立つ。
定年までもたせるとは、簡単にいえば、
窓際族にならないですむにはどうすればよいかということであろう。
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