“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第654回
鯨の会が盛り上がる

坐唯杏で次に提供された鯨は、
ヒャクヒロとサエズリの酢味噌和え。
百ヒロとは腸で、サエズリは舌。
まずは、ヒャクヒロからいただく。
ヒダがある断面は、牛や豚の内臓のような薄茶色をしていて、
噛むとプリッとした食感が心地いい。
酢味噌の酸味が、ほどよくヒャクヒロの旨みを引き出している。

続いて、サエズリ。
真っ白なコラーゲンいっぱいで、口のなかでプルンと踊る。
淡白な味わいで、爽やかさが残る。
合わせたのは丹沢山「隆」と秋鹿「霙もよう」。
続いて、晒クジラの繊打ち野菜和え。
大根、セロリ、キュウリ、ニンジンのカツラ剥きを
チリ酢で和えてある。
シャキっとした野菜の食感がクジラを支える。
そして、次が、汁が提供される。
何かと思えば、皮クジラが中に入っている卯の花汁。
卯の花、すなわち、オカラを味噌仕立てにしたもので、
皮クジラがアクセントとなっている。
飲むほどに身体が温まってくる。

ここらへんまで食べてから、
いよいよ小松正之博士にクジラの話題提供をお願いする。
そして、配布されたのは、
「海守」という小冊子や講演会資料など、
小松博士が執筆した鯨の事情を紹介する記事。
現在の漁業の問題点、
鯨と日本人のかかわり、鯨の種類と食味、
ペリー提督との日米和親条約は米国の捕鯨のため、
国際捕鯨委員会(IWC)での日本の対応など、
とても面白い話題で、
参加者一同食べるのを忘れて聴き入っていた。

鯨はそもそも余っていて、
IWCは科学的な根拠で捕鯨禁止にしているのではない、
という話は聴いていたが、
それに対して、何故日本の主張が通らないかという裏話など、
普段では聴けない話もでる。
質問もたくさんでて、
小松博士は鯨を食べに戻る暇がないくらい。
一番味のいいのは何かという質問には、
ナガス鯨だろうという答え。
また、ツチクジラという種類は、
IWCが鯨として認定していないので、
日本は自由に商業捕鯨ができるという話も面白かった。

そして、話も一段落ついた頃に、刺身が提供された。


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2007年3月8日(木)

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