“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第639回
庭の蕗の薹で「蕗味噌」を前菜に

第3回「世界一旨い日本酒の会」の前菜をどうするか悩んだが、
一品はそろそろ自宅の庭に出てくる
蕗の薹を使うことを思いついた。

当日の朝に庭に出ると、今年は暖かいせいで、
かなりの蕗が青々と葉をつけて出ていて。
「しまった、遅かったか」と思いつつ、
蕗の葉を掻き分けて探すとあった。
出たばかりの蕗の薹を発見。
全体で15個くらい採れた。
これを蕗味噌に仕立てる。

まずは、蕗の薹を水洗いし、変色しているところを除去する。
そして、包丁で細かく切る。
あまり細かすぎると、
苦味が薄れるのでほどほどにするのがいい。
鍋を温め、胡麻油を敷いて細かくした蕗の薹を丁寧に炒める。
そこに、岡田製糖所の和三盆を入れてさらに炒める。
さらに味醂と出汁を1対2の割合で入れて蕗の薹になじませる。
味醂は九重桜、出汁は羅臼の端切れに、
枕崎の「丸久」の本枯節を使用したもの。

「丸久」の鰹節は、
以前は本枯節1本をカンナで削って使用していたが、
最近は窒素封入の削り節をよく使うようになった。
その場で削って出汁をとったほうが、風味はよくなるが、
私の出汁のとり方は蕎麦汁用の長時間煮込むことをする。
蕎麦の汁は、香りはあまりださないほうが蕎麦と合うので、
追い鰹はしない。
そのように煮込む場合は、
削り節でも十分な深い味わいがでる。
味醂と出汁が十分蕗の薹になじんだ時点で、味噌を投入。
おなじみの「海の精」の玄米味噌を使う。
火を弱め、木勺で丹念にかき混ぜて、
均一に火が通るように配慮する。
味醂と出汁が味噌にもなじんでいって、
艶がでてきて汁けが少なくなれば完了。

この蕗味噌は素晴らしい自然の苦味で旨かった。
採ったばかりという新鮮さのせいか、雑味が全くしない。
口に含むと、まずは、味噌の風味が香ばしく漂う。
その中に、蕗の薹の苦味が奥から顔を出してきて、
味噌の旨みに合さり、絶妙のハーモニーを口のなかで奏でる。
これに合う酒は、白影泉。
ボデーのある複雑味が
蕗味噌の風味をよりいっそう引き出してくれる。
日本酒が進むこと、進むこと。
参加された方々も絶賛。
朝採りの食材で旬を愉しむことから、宴はスタートした。


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2007年2月15日(木)

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