“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第540回
たかが焼き鳥、されど焼き鳥

バードランドで最初の焼き鳥はハツ。
ハツは焼き鳥のなかでかなり好きなほうだ。
たいてい注文をする。
文字通りハートの小ぶりの肉だが、
プリッとしているのでもなく、ムチッとしているでもない、
微妙な食感のなかから溢れ出る旨みはなんともいえない。
そして、次が銀杏。
ぎりぎりの塩、ぎりぎりの火の通し。
銀杏の濃い甘みを堪能する。

そして、ペタ。
ペタッと座るということが語源か。
鶏のお尻の先端。
上品な脂に皮の近くの濃い甘みが絡み、
酸のよくでている日本酒の燗によく合う。
そして、これは1羽で2個しかとれないソリ。
腿の付け根のわずかな部分。
プルンプルンといった食感が素晴らしいだけでなく、
凝縮した旨みはまさに天下一品。
バードランドにきて、ソリが残っているときは、
本当に幸せを感じる。
旨さの主張があるが、それが、出すぎていない。
口のなかで形成される美食の宇宙のなかで、
動かない中心となっている。

そして、ボンボチ。
お尻の付け根の肉。
ムチっとした食感と、繊細な脂、それに、噛むと吹き出る旨み。
次に巨大椎茸。
厚めの肉が旨みいっぱい。
火の通し方が絶妙。
それを愉しんでいる間もなく、ツクネがでてくる。
アツアツ、ホカホカで口のなかが天国。

最後に吉田牧場のチーズに茗荷。
チーズはねっちりと焼かれていて、
それでいて、しつっこくない旨みがいっぱい。
茗荷がまた、口のなかをさっぱりとさせる。
ここまで来て、十分以上に焼き鳥を満足したことが実感される。
これが、阿佐ヶ谷店ではいくらか欠けている。
というのは、店主の和田さんは、
店内の客の注文を全て把握していて、
どの客にも焼き鳥が間があかずに提供されるように、
逆算して焼いているからだ。

最後に親子丼に鶏スープ。
相変わらずの親子丼の旨さ。
そして、プリン。奥久慈軍鶏の卵を用いた逸品。
嫌味のない自然な旨さがある。
これには、月桂冠の古酒を合わせる。

バードランドはやはり脂が少なく、
旨みの凝縮している奥久慈軍鶏を堪能するための、
ベストな店だ。
焼き鳥というと、
脂でギトギトしたものというイメージで行くと裏切られる。
通常の焼き鳥屋の概念を客は捨て去ることになる。


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2006年9月22日(金)

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