“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第497回
三浦の蛸は絶滅しかかっている

蛸が壷に入っていた。
空洞に通じる小穴に棒をつっこんで蛸を外へ追い立てる。
壷の出口から蛸が舟艇に滑り落ちた。
すかさず矢島さんはそれをネットに入れる。
暴れないようにするためだ。
ちょっと小さめ。
しかし、これくらいが一番旨いという。
ネットに入れて自由を奪われた蛸は
船のなかの水槽に入れられる。
収穫は結局3匹。
他にも赤ん坊のような小さい蛸が数匹壷に入っていたが、
それらは海に逃がす。
絶滅しないような配慮だ。

最近は蛸が入ると蓋が自動的に閉まる
罠仕掛けの蛸壺を使う漁師が多いらしい。
しかし、矢島さんは昔ながらの蓋の無い蛸壺にこだわっている。
「この蛸壺は効率は悪いけど、蛸が絶滅しないんだよ。
 逃げたいやつは逃がしているからね」
という説明には感動すら覚える。
矢島さんは刺し網漁もしているが、
網の目の粗いものを使っているという。
小魚は逃げられるようにという配慮だ。
矢島さんによると、三浦の蛸も年々減少していて、
それは、環境悪化以上に乱獲による影響が大きいという。
根こそぎ獲ってしまうのだ。
そんな、子孫にまで継続できる
昔ながらの漁が途絶えてきている。
利益追求の漁師は
自分で自分の首を絞めていることに気がついていない。

魚介類の絶滅をふせぐ昔からの漁法といえば、
鳴門の若きカリスマ漁師である村公一君が矢島さんに重なる。
彼は同じ漁場では1週間以上は漁をせずに、
環境に住み着いた魚を落ち着かせることに配慮している。
そのような漁法は鳴門の現役を引退した漁師に
昔のやりかたを聴きまわって分かったという。
最近は、釣り船ではオキアミをコマセとして撒いて、
生態系を壊すだけではなく、
海底のヘドロとして堆積する害も指摘されている。
利益追求・効率至上主義の漁法が、
昔ながらの継続可能な伝統的両方を駆逐しているのだ。
このままでは、三浦半島から蛸がいなくなるかも知れない。


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2006年7月25日(火)

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