第432回
炭火焼きが優れているとは限らない
「和牛料理 さんだ」の焼き台は炭焼きではない。
ガス式か電気式か確認しなかったが、
赤外線グリラーで炭焼きに匹敵する熱量の放射熱で焼くタイプ。
ガスの欠点である臭みが食材に移ったり、
ガスの水分でベタっとなったりすることはなく、
しかも炭火よりも火力のムラがない。
バードランドの和田さんによると、
炭火の焼き台よりも、経験の少ない職人にとっては
かえって焼きやすく、安定した品質の焼き物ができるという。
炭火のほうはムラがあるのを旨く利用すると、
また、面白い焼き方ができるらしい。
和田さんはこれまでは、
炭火の温度が材料よりも勝つくらいの、
攻撃的な焼き方をしていたのが、
最近温度差を使って
だんだんと串の場所を温度の低いほうに移していく、
逃げの焼き方をしてみたら、以外と美味しく焼けたそうだ。
さて、焼き物の最初は、膵臓(すいぞう)。
大蒜醤油おろしか、山葵醤油でいただく。
プリっとした食感で香ばしさと甘みがあり、
焼き物の最初としては十分。
次がミノ焼き。
コリっとした食感と綺麗な旨みで、
とてもよい食材を使っていることがわかる。
こんな上質のミノを食べたのは、
松阪市のホルモン焼きの店「一升びん」以来だ。
さらに、ギアラ焼きで攻めてくる。
脂の塊のようだが、その甘みがなんともいえない。
焼き物になって、神亀の燗酒がどんどん進み、
次々に3本づつのお銚子を注文してしまう。
次が、シビレ焼き。
これは喉の脇にある、
フランス語でいうとリードボーに当たる部位。
適度に脂が乗っていて、
それを焼いた香ばしさと旨みがたまらない。
これだけの焼肉攻撃に一同顔がほころんでいる。
さらに波状攻撃で、大動脈、舌下(たんした)、ハラミと
焼き物がでてくる。
大動脈は最高のプリプリの食感。
噛むほどに甘みが口のなかに溢れてくる。
舌下はベロの下の部分。
これに対して、喉の奥側は舌本(たんもと)と呼ぶらしい。
この舌下は一旦凍らせていたもの。
この処理をしていないと、
焼いても固くてなかなか噛み切れないと、今半の高岡さんが説明。
舌の皮の近くの甘みがほどよく感じられ、
噛むと実にジューシーに旨さが溶け出してくる。
ハラミ焼きもジューシー。
脂の香ばしい旨みと肉本来の持つ野風味が渾然一体となっている。
焼き物の波状攻撃で終わりかと思うと、
そのあとはシャブシャブが待っていた。
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