“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第402回
究極の蕎麦切り

蕎麦味噌の次が、いよいよ自家栽培蕎麦の蕎麦切り。
通常は、蕎麦切りは最後の〆に小腹を満たすように提供されるが、
今回は美味しい日本酒を飲んで
一同が酔っ払う前に出したほうが味が分かるのではと、
ご主人の菅野さんと相談していた。

さて、その蕎麦切りだが、
皮剥きをしたあと「丸抜き」
(玄蕎麦の殻を除去した実)を3ヶ月を経ていたが、
味がさらに凝縮されていて、なんとも力強いものであった。
久しぶりに本当に蕎麦らしい野趣あふれる風味にであった。
小泉先生はじめ、こんな旨い蕎麦は初めてという。
小泉先生とニンベンのAさん、そして講談社のIさんは、
前日に室町砂場で小泉先生主宰の俳句の会で、
蕎麦を食べてきたばかり。
室町砂場の蕎麦とは全く違うという。
私へのお世辞を差し引いても、
とても満足していただいたことがよく分かった。

「室町砂場」、「藪」御三家などの老舗蕎麦屋、
あるいは、蕎麦ブームに貢献してきた「ほそかわ」、
「朴念仁」などの手打ち蕎麦屋は、
軽い上品で繊細な味わいの蕎麦を出すが、
その対極となっている風味にびっくりされた様子だった。
この蕎麦を栽培した畑は栃木県馬頭(現在は那珂川町)の
里山の斜面に面していて、水はけがよく、
昼は燦々と太陽を浴び、夜は冷えて
蕎麦の生育を抑える絶好の栽培地だ。

そこに、昨年は畝幅を1メータと
通常の手刈の蕎麦畑の畝幅60センチメータよりも
広くとって育てた。
そして、その畑は
有機で野菜栽培をそれまで行っていたということで、
栄養分は十分と考えて、肥料はやらなかった。
この畝幅を広くとったことは、刈取時には失敗と感じられた。
というのは、その畝の間に雑草が育ち易い環境を提供してしまい、
刈取のときは雑草が生茂るなかを
蕎麦の茎を探しながら鎌を入れるという、
早朝から暗くなるまでの一日がかりの大変な作業となってしまい、
しかも収穫量が少なかったからだ。

ところが、できた蕎麦切りを食べてみると、
自然に近い環境で、雑草と戦って逞しく育ったことによって、
蕎麦本来の風味がでてきていることがわかった。
畝幅を広げたことは、あながち失敗ではなく、
蕎麦の風味を野生的なものに戻してくれたようだ。
この蕎麦は前々日に蕎亭大黒屋さんに「丸抜き」
(玄蕎麦の皮を剥いた実)の状態で届けておいて、
それをご主人が7種類の石臼で、粗さを違えて製粉し、
それらをブレンドしたもの。
そば粉の粒子の粗さを異種用意して合わせることによって、
腰のよさと風味のバランスがとれる。
このようにして、提供された蕎麦切りは、
私自身でもこれまでに体験していない、
究極の蕎麦の旨さを堪能できた。


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2006年3月14日(火)

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