|  第373回鮭ハラスと古酒
 珍しく本業で雑誌の座談会を頼まれた。会場は経団連会館の会議室。
 テーマはITS(高度自動車交通システム)ということで、
 科学警察研究所の方が司会を行い
 自動車メーカーの技術者と討論を行った。
 弁当がでたが、経団連会館の食事はパレスホテルが入っているので、
 悪い味ではなかったが、特に感激したものでもなかった。
 2時間ほど熱い討論が続いて終了。
 その後日本酒が飲みたくなり、
 飲み仲間に電話して池尻大橋の地酒居酒屋で落ち合う。
 弁当を一応一人前は食べていたので、
 お腹はまあまあいっぱいの状態だったので、
 軽い酒肴を注文することになった。
 刺身はブリ、中トロ、大トロとあったが、焼き物が食べたいと思って壁に貼られた短冊を眺めると、
 ハラス焼きがすぐ目についた。
 ハラスは脂が乗っているだろうから、
 古酒の熟成香がマッチすると考えて、
 「るみ子の酒」のH5BY・H6BYブレンドの燗を注文した。
 ハラス焼きの焼き加減は絶妙。ぱさぱさにならない限界まで焼いてあって香ばしく、
 脂が溶け出しそうになっている。
 口に入れるとハラリと身がほぐれてきて、
 上品な脂がまざった肉の甘みに口がほころびてくる。
 これに、10年以上寝かしてある古酒を同時に流し込む。「るみ子の酒」H5BY・H6BYはかなり褐色の色が着いていて、
 ナッツを焦がしたような熟成香が特徴的。
 これが、ハラス焼きの脂を引かせて、旨みだけを残してくれる。
 熟成日本酒の力をあらためて認識する夜だった。
 他には、奥播磨袋絞りH14BY、悦凱陣山廃純米雄町と「しもつかれ」、「糸こんにゃくとタラコ煮」を合わせる。
 「しもつかれ」は栃木県の郷土料理。
 豆と大根、にんじん、鮭の頭、油揚げなどを
 酒粕に漬けて熟成させたもの。
 大根、にんじんは鬼おろしと呼ばれる粗い卸機でおろす。
 鮭の頭は茹でておく。
 昔栃木に住んでいたころには、
 たまに食べてその独特の癖のある香味が印象的だった。
 東京へ越してからは食べる機会がほとんどなかった。
 こちらの店のものは、臭みはなく品良く熟成させている。
 これに、悦凱陣が不思議とよくあった。
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