第368回
酒米の違いで熟成が変わる
日本酒の酒米は
山田錦、雄町、五百万石、八反錦(1号、2号)、
美山錦、華吹雪、強力、愛山、アキツホ、うこん錦、
亀の尾、金紋錦、玉栄、若水など、たくさんある。
これらの作る米で味の違いがもちろんある。
しかし、ワインにおける原料の葡萄の違いほどの差はない。
日本酒の味の違いは、米の違いよりも、
蔵ごとの造りの違いのほうが大きい。
宗玄、秋鹿などの全く同じスペックで作っている
原料米違いの酒を同時に飲み比べてみると
味の違いが分かって面白い。
例えば、酒米としては最高峰と言われる
山田錦と雄町を比べてみると、
山田錦はふくよかな幅広い味わいがあり、余韻が長い。
雄町は味の幅は狭いが、鋭い深みのある味わいを示す。
この両巨頭以外の酒米で作った酒もいろいろな特徴がある。
美山錦は固めの味わいを示し、
五百万石は柔らかい味になることが多い。
例えば、五百万石と山田錦で造った酒を飲み比べると
新酒のうちは味の差はそれほど大きくはない。
五百万石もとてもいい酒造好適米だ。
ところが、熟成させると山田錦の価値がよく分かってくる。
綺麗に味の深みがでてくるのだ。
五百万石で造った酒でも、いい造りをしていれば、
年月が経過するとともに、いい具合に味ノリしてはくる。
しかし、山田錦で造った酒の枯れ方とは違い、
深みがあまりでてこないことが多い。
雄町はどうかというと、
よく造ってある雄町は山田錦以上に
奥深い特別な旨みがでてくることが多い。
しかし、熟成してもそれほど旨くならないこともある。
山田錦が優等生であれば、雄町はやんちゃ坊主だ。
もちろん、同じ山田錦、雄町でも産地の違い、
作り手の違いがあり、
やはり品質の高い米のほうが熟成もよくなる。
ワインも葡萄の種類によって、熟成のしかたが違うが、
日本酒も酒米の違いによって変わるところが同じだ。
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