第324回
イノシシのフィレ肉は極上の味
イノシシにもロース、フィレとあり、
両方を農家の方が取り寄せてくれた。
畑を荒らした憎きやつではない。
これまで、イノシシの肉は鍋にして何回か食べたことがあったが、
ロースとかフィレとか意識したことはなかった。
前回、畑仕事をしたときの肉はロースのようだったので、
フィレ肉を意識して食べるのは初めてだ。
炭火でフィレ肉を焼く。
網に乗せて周りをあぶり、中に火が通り過ぎない程度にする。
塩コショウする。
このときには、最後にお腹がいっぱいになって、
ロースまで行き着けなかったが、
ロースは自宅へ持って帰って家族で食べた。
ロースのほうがいくらか癖があり、しかも、固い。
90歳になる母はかじりついたが、噛むのは無理なようだった。
ロースに比べるとフィレは柔らかくて、
極上の豚肉の上を行く旨みがある。
豚にとても似ているが、むしろ、雑味がなく、深い旨みがある。
脂が少ないので、その臭みもない。
口に含むと、まず炭焼き独特の香ばしさが広がる。
噛むほどに旨みが引き出される。
これは、神亀純米原酒と合わせる。
神亀のどしっとした燗あがりの味わいが、
シシ肉の旨みをさらに引き出してくれる。
神亀は燗が本当に旨い。
神亀を冷やして飲むことなど、罪悪でさえある。
その骨太の骨格が肉料理に実によく合うのだ。
一同、イノシシ肉を食べ、神亀の燗を飲み、
野獣肉の話題で盛り上がる。
熊がまた旨いそうだが、なかなかちゃんと食べる機会がこない。
ミンチされたものは食べたことがあるのだが。
この馬頭では熊はいないそうだ。
他には狸がいるらしいが、狸は臭いと農家の方が言う。
一度食べたら、三日間臭みが身体から抜けずに、
始終鼻につき、困ったことがあるという。
味はいいらしいが、
これでは狸は食べないほうがいいかも知れない。
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