“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第309回
オールドコーヒーは新鮮な驚き

ちょっと時間が余って、知人と宴会の相談をすることになった。
知人は翌日に成人病検診があるとかで、
珍しく酒を飲みに行くのではなく、
コーヒーを飲もうということになった。
そこで、昔からたまに寄っている老舗のコーヒー専門店である
銀座「カフェ・ド・ランブル」を久しぶりに訪問した。

普段は普通のハワイコナなどの
ストレートコーヒーを頼んでいたのだが、
メニューをよくよく見ると'90とか'83とか
ヴィンテージがストレートコーヒーの後ろに書いてある。
まるで、ワインリストのよう。
そして、そのヴィンテージが記してある。
そして、それらは星印がついていて、
10年以上熟成させたオールドコーヒーとの但し書きがついていた。

そこで、私は'73年のガテマラを、
知人は'79年のコロンビアを注文。
このコーヒーにはびっくりした。
最初のインパクトは全くない。
滑らかに抵抗感なく入ってくる。
そして、味わいの余韻が長くあとまで続く。
まるで、常温で熟成させた日本酒のよう。
びっくりして店のスタッフに色々伺った。

オールドコーヒーの概念そのものは、
60年以上前にかかれた、
コーヒーの本にも紹介されているとのこと。
しかし、手間隙かかるので、
オールドコーヒーを提供する店はとても少ないという。

熟成方法は豆のまま湿度を50%に保って常温で保存する。
そのための部屋をわざわざ作ったそうだ。
そこに、十年間以上コーヒーを眠らせてから使用する。

しかし、どんなコーヒーでも熟成に耐えるかというと、
これが違う。
個性の強いコーヒー豆でないと熟成してスカスカになってしまう。
これが、実に日本酒の熟成に通じるところがあって、
興味深かった。
最近のコーヒー豆は個性がなくなってきているという。
生産量の増加にともない、
安定した栽培を求めると、個性がなくなるらしい。

また、コーヒーの熟成については、
コーヒー通ほど否定的な意見を言うらしい。
これも、日本酒の世界そっくり。
面白い経験をして、とても有意義なコーヒータイムであった。


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2005年11月3日(木)

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