第306回
熟成日本酒がチーズによく合う
悦凱陣のH16BYをまずは常温で参加者に注ぐ。
参加者一同からは、美味しいという声が聞こえてくる。
続いて、H11BYを同じく常温で提供する。
盃のなかの色が全然違う。
5年間常温で熟成させてきた無濾過純米生原酒だが、
黄金色に輝いていて、落ち着いた熟成香が立ち上ってくる。
口に含んで、新酒と全然違うと驚きの声があがる。
新酒で見られる固さ、抵抗感が姿を消して、
綺麗に枯れた落ち着いた味わいが愉しめるのだ。
この両方を1升瓶ごと熱湯をはったシンクにつけて燗をする。
温かい状態で提供されて、参加者の驚きの声はさらに高まる。
常温では、恥らっていたかのように姿を隠していた旨みが
どっと押し寄せてくる。
料理も愉しみながら、
熟成日本酒の会はだんだんと佳境に入っていった。
悦凱陣が骨太の旨みを提供するのに対して、
奥播磨のH9BYの2種類はともに、
枯れた複雑味がなんどもいえずにいい。
また、十旭日のH7BYはナッツのような香りのなかに、
熟成した旨みがバランスよく収まっている。
秋鹿の嘉村壱号田の2000年火入れと2001年生酒は、
凝縮した旨みを優しい酸が包んでいて、
最初は芳醇な味わいの当たりがあるが、
酸による切れ上がりで後口がとてもすっきりと飲める。
参加者一同、その違いに驚き、
また、燗や燗冷ましの旨さを絶賛していた。
料理で特に熟成日本酒とよく合ったのは、
ポスカレールチーズの酒盗和え。
奥播磨と抜群にいい相性を示していた。
チーズと酒盗の生臭さがお互いに打ち消しあっているところに、
熟成日本酒の枯れた味わいが忍び込み、
両方を旨みに変えてくれる。
まさに、日本酒ならではのマリアージュだった。
他の料理も、蔵の違い、ビンテージの違い、米の違いなどの
様々なバリエーションの熟成日本酒と
色々な面での相性を示していた。
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